データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

伊予市誌

六、水産加工

 従来は、漁家が水揚げした漁獲物を漁家自身の手によって生産販売されたものである。いわし地びき網漁業のいわしは、煮干し(いりこ)に、ちりめんはちりめん干しに加工されてきた。底びき網漁業の小型えびも干しえびに加工されていた。このような加工は主に漁村婦女子の手にゆだねられてきた。
 底びき網漁業によるえびは、鮮度が大切であり、早期に処理する必要がある。そのため盛漁期の価格の変動が著しい。このような状況にあって協同組合では、一九五八(昭和三三)年にえび冷凍業者である大栄水産を誘致し、漁期中のえびの一部を凍結原魚として年間価格契約に基づいて分割取引し、えびの価格維持向上に努力してきた。しかし、大栄水産は、施設規模が小さいために経営採算がとれないので、事業中止のやむなきに至り、施設を漁業協同組合へ譲渡したい旨の申し入れがあった。一九六五(昭和四〇)年四月、譲渡交渉が成立して施設買収を行った。
 買収後は、漁業協同組合の自営事業として、冷凍による出荷調整を行うとともに、えびの冷凍食品を試験的に操業し、えびの価格向上に成果をあげるとともに、冷凍食品事業の見直しを得た。一九六六(昭和四一)年、沿岸漁業構造改善事業として、製氷冷凍施設の増設を起工し、一九六七(昭和四二)年一月に完工した。この施設は伊予漁業協同組合の外に隣接する上灘漁業協同組合、下灘漁業協同組合、松前漁業協同組合に所属する漁民の漁獲物も取り扱っている。そのため、伊予漁業協同組合では冷凍車を所有し、水揚げ魚類の搬入、冷凍加工食品の搬出にあたっている。四漁業協同組合に所属する漁民のえびの総漁獲量は年間一、二〇〇トン内外を占めている。
 そのほかには、さより・はぎ・とらはぜ・えそ・あなごなどの魚類とえび・かに類、いか・たこ類、あさり・ばか貝などの貝類を加工冷凍して市場に出荷する。昭和四八年度の実績は一億七、六六八万円であったが、年々漁獲が減少し、一〇年後の昭和五七年度の実績は二%にも満たなくなっている。第141表のとおりである。
 沿岸漁業構造改善事業の魚類荷捌所(魚市場)と冷凍加工場の建設は、第142表で見るように流通機構の確立と適正価格の維持と水揚労力の節減に効果があった。更に、漁村婦人の年間就労による収入の確立ができたこと、及び健康保険・労災保険・農林共済などの加入による厚生面の確立ができたことは働く婦人にとってよろこばれた。当初この加工場に働くもの八七人であったが、一九八五(昭和六〇)年六月現在三〇人と半数以下に減少している。しかし、働く場ができたことなど、漁村の生産及び生活上でプラスの面が多い。
 伊予漁業協同組合では、水揚量の少ない魚介類について、組合の冷氷・冷凍事業として、組合が漁民から買い上げ冷凍し、付加価値を付けて適時出荷している。第143表は平成一四年度の買取冷凍販売の実績である。

第162図 最近の市場取扱実績

第162図 最近の市場取扱実績


第140表 沿岸漁業構造改善事業、魚類荷捌所(魚市場)該当施設現況表

第140表 沿岸漁業構造改善事業、魚類荷捌所(魚市場)該当施設現況表


第141表 冷凍加工事業

第141表 冷凍加工事業


第142表 沿岸漁業構造改善事業冷凍加工場該当施設現況表

第142表 沿岸漁業構造改善事業冷凍加工場該当施設現況表


第143表 冷氷・冷凍事業の買取冷凍販売の実績

第143表 冷氷・冷凍事業の買取冷凍販売の実績