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愛媛県史 学問・宗教(昭和60年3月31日発行)

はじめに

 神道は、日本の民族的な神観念に基づいて発生し、日本人を中心として展開されてきた伝統的な宗教実践およびこれを支える生活の態度やその指導理念である。それは、今日もなお大部分の日本人の多様な生活の局面を規制する原理として作用しており、神社を中心とする共同体の祭りや家ごとの祭祀のなかにその意味が象徴的に表れている。
 さて、神道は一般に、神社神道・教派神道・民俗神道の三者に大別される。神社神道は、そこに神社を中心とした精神的紐帯を形成することで地域社会の統合団結に密接な役割を果たし、神道の主流をなすものである。しかし、教祖と呼ばれる特定の存在を持たない。したがって、形態的には自然宗教であり、伝播範囲からすれば日本という一定の枠組の中で行われてきた民族宗教であるといえる。そして、日本歴史の発展段階とともに教理・教説を整備しながらも、その根底には農耕儀礼や狩猟儀礼などの原始宗教的な側面を色濃く残存させ、保持しているのである。
 また教派神道は、幕末維新期に在来の宗教的伝統を基盤背景として形成された一連の宗教運動であり、一三派神道系教団を中心として展開された。さらに民俗神道は、民間信仰の中で神道との深い関係のなかで形づくられた民間の行事や習俗のことである。そして、これらが相互に連関し、複合しながら生活の指導原理としての神道が構成されてきたのである。
 このような文化複合としての神道の歴史的展開を、以下、ややトピック的ではあるが、伊予国および愛媛県における政治的・社会的な時代背景の中で概説しておきたい。