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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

4 教育課程の編成

 明治・大正時代

明治一四年(一八八一)に設立された東京職工学校の、同一八年当時の教科課程は実習科目に全時間数の三分の二を当てている。同二七年に制定された工業教育関係の最初の規定である「徒弟学校規程」によれば、従来の教科課程がほとんど専門科目によって編成されていたのと異なり、一般教養の面も考慮されている。また、同三二年に制定された「実業学校令」に基づく「工業学校規程」では、「工業学校ノ授業時数ハ実習ヲ除キ毎週二七時間以内トス但実習時数ハ学科ノ種類二依リ適宜之ヲ定ム」と規定された。
 その後大正九年(一九二〇)に、「実業学校令」が改定され、それに基づき同一〇年に「工業学校規程」の改定が行われ、教科目は基礎科目、工業に関する教科目および実習とし、毎週の授業時数は実習を除き二四時間以内とすることなどの規定が示された。

 昭和の初期から終戦まで

大正末期から昭和にかけて、わが国の社会情勢は急速に変化し、実業諸学校への進学者は著しい増加を示した。その変化に即応して昭和五年(一九三〇)に「工業学校規程」が改定され、工業に関する教科目の一部を選択科目とすることができることなどが規定された。
 同六年の満州事変に次ぐ同一二年の日中戦争以後、わが国は戦時体制下にはいった。同一八年一月、「中等学校令」が公布され、「実業学校規程」が定められて学科・教科目および訓練などが示された。その後戦局の緊迫に伴い戦時教育体制が強化されたため、改善の実をあげられないまま終戦を迎えた。

 戦 後

戦後におけるわが国工業は疲弊の極に達し、工業教育の目標は定まらない状態にあった。昭和二二年(一九四七)三月、教育基本法、学校教育法、同施行規則が公布されて戦後の教育の基本原理と学校体系が
定められ、同二三年四月から工業学校は工業高等学校として新しく発足した。これと前後して「学習指導要領一般編」及び「各教科編」が定められて単位制が実施された。新制高等学校は普通科・職業科の区別なく共通に学習させる必修の普通教科の総単位数を三八単位と定め、工業高等学校は必修教科三八単位に加え、工業に関する教科三〇単位以上を必修とした。更に、同二六年度版「高等学校学習指導要領工業科編(試案)」が発表され、この試案に示された教科課程の編成例では、必修普通教科三八単位、必修工業教科三〇単位、選択教科一七単位、計八五単位を卒業に必要な最低単位数として教科課程を編成することになった。
 昭和二六年度版の学習指導要領を実施した結果の反省に立って、文部省はこれを改善し、わが国の実情に合った教科課程を立案するため、同二七年一二月、教育課程審議会に対し、「教育課程の改善、特に高等学校の教育課程について」諮問した。その答申に基づいて文部省は、新たに「高等学校学習指導要領工業科編(試案)(昭和三一年度改訂版)」を刊行した。この改訂で大科目制を中科目制に改め、すべての課程において履修させる普通教科・科目の総単位数を三九単位と改めた。
 昭和三〇年代に入り、わが国の工業界は年々隆盛となり、いわゆる技術革新といわれる大幅な質的変化を示した。このような新事態に即応するため文部省は、同三五年六月の中間発表を経て、同年一〇月「改訂高等学校学習指導要領」を告示した。改訂の要点は、指導要領により、教育課程の編成、指導計画の立案に拘束性が生じたこと、職業に関する教科・科目の必修単位数を三五単位以上としたこと、従来「課程」と称していたのを「学科」と改め、学科ごとに科目を定めたのを廃して科目の選択が自由にできるようにしたこと、及び工業界の趨勢に応じて化学工学科、電子科などの新しい学科を設けたことなどであった。
 その後社会情勢の安定や経済状況の高度成長などの影響をうけて、高等学校進学率が急速に上昇したため、生徒の能力・適性・進路は多様化し、それに応ずる教育の必要が生じた。一方において学術の進歩や科学技術の進展に対応し得る思考力・創造力・実践力を育成するなど、教育内容、方法の改善が必要になってきた。
 文部省は教育審議会の答申を受けて、昭和四五年(一九七〇)五月、その案を公表して検討を加えたのも、同年一〇月学校教育法施行規則の一部を改定告示した。工業に関する主な改正点は、辛金料を廃止し、情報技術科・工業計測科など五学科を新設し、三学科は名称を変更したこと、工業に関する専門科目のうち八〇科目を廃止し、一九科目を名称変更し、新たに八八科目を設けたことなどであった。
 同四八年には全国の高校進学率が八九・四%に達し、大学への進学率も同年には三一%を越える情勢に至って、国民の教育機関という観点から、教育課程を抜本的に検討し、改善する必要に迫られてきた。同時に職業学科への進学希望者の減少傾向、職業学科からの大学進学希望者の増加傾向など、職業教育改善の新たな課題を生じてきた。
 同四八年一一月、文部大臣は教育課程審議会に対し、「小学校・中学校、及び高等学校の教育課程の改善について」諮問し、同五一年一一月の答申に基づき、同五三年六月、新しい「高等学校学習指導要領案」を公表して意見聴取を行ったのち、同年八月、「学校教育法施行規則の一部改正省令」の公布と共に告示し、同五七年四月一日から学年進行によって実施することとした。
 その特色は、各学年において共通に履修させる工業の基礎的・基本的科目として「工業基礎」、「工業数理」が新設されたこと、実験・実習を重視したこと、「電気工学I」、「電気工学Ⅱ」を統合した電気系学科に共通な基礎科目として「電気基礎」を新設したこと、及び卒業に必要な単位を八〇単位以上、必修の普通教科・科目を二七人三一単位、専門教科・科目の最低必修三〇単位のほかば、すべて学校の裁量にまかされたことなどである。