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愛媛県史 文 学(昭和59年3月31日発行)

三 伊予の軍記

 古代から中世にかけての河野氏の歴史を伝えるものに、『予章記』『予陽河野家譜』『築山本河野家譜』がある。これらはいずれも歴史史料であって、特に中世における伊予国の歴史を知る上で重要なものであるが、史料的に見て必ずしも正しいとは言えない記事をも有しており、その点では軍記物語に近い性格を持っている。元寇の折の通有の「河野の後築地」の話のように、他の資料には見られないが、河野氏の活躍の様子を鮮やかに描いている話も少なくない。他に河野氏の活躍を語る軍記作品としては、近世になって『予陽河野盛衰記』『南海治乱記』などがある。(資155)
 伊予国で作られた軍記作品としては、これも成立は近世であるが、『清良記』『予陽大野軍談』『澄水記』などがある。その中で、戦国時代の南予にあって、九州の大友氏や土佐の一条氏・長宗我部氏との相次ぐ合戦の中を、その智謀と勇敢な戦いによって生き抜いた、大森城主土居清良を描いた『清良記』は、文学的に見ても十分評価し得る作品である。