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愛媛県史 民俗 上(昭和58年3月31日発行)

第二節 家と親族組織

 家とか親族の問題は私たちの生活にとってたいへん身近な存在である。この身近さゆえに私たちの感覚からすれば、いつもウチマの問題として取扱ってきていたので、なかなかオモテムキの論議にはなりにくかった。従来ウチマの事柄を述べようとすれば、そのありかたが論議の中心であった。ときにはそれが儒学であったり、いわゆるアメリカの家庭であったりしてなにかよそよそしかったのである。それに対して、ありのままの姿のなかからものごとをみてゆこうとする考え方がでてきている。とりわけ、精神医学、文化人類学等の科学的アプローチのなかから、「痛みの共有」というひとつの立場が芽ばえるようになって、より生活に密着した形でものごとを語る素地ができている。また生活環境の変化のなかで家族の存在意義が問い直されていることも考慮されなければならない。その関心は概ね次の三つに整理することができる。

(1) 含み資産への刮目 人口高齢化に対応した日本型福祉社会のモデルを模作する過程で、従来日本社会にあったとされる強固な基盤をもった家制度の伝統を生かし、今後の社会保障制度を考えようとするもの。
(2) 日本人のアイデンティティー 企業や商社等の活動が飛躍的に増大し、主として経済の国際化が進展するにつれ内外の各方面から、日本人とは何かという問いかけがはじまった。そうしたなかで「日本的経営」ということが論議され始めている。「日本的経営」といわれるもののなかみは、日本社会に固有な家意識にほかならない。私たちにとって一体「家」とは何かという問いかけを通して、日本人としての自己同一性を考えようとするもの。
 (3) 危機意識 現代社会では、家族はその存在をおびやかされているといっても過言ではない。ことに家庭内暴力等にみられる現象をみれば家族崩壊の危機は深刻である。このようなときにあってその家族のしくみを明らかにしてゆこうとするもの。
 以上家族に対する関心のありかたは様々なところから出てきているものの、その根っこには「変化と持続」という古くて新しい問題が常に横たわっていることがわかる。