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愛媛県史 社会経済6 社 会(昭和62年3月31日発行)

三 災害応急体制の確立

 災害救助法の制定

 被害者救助については、従来罹災救助基金法に基づく救助措置が講じられてきた。しかし、同法は、救助全般にわたる規定がないため、救助活動がまちまちで不徹底であることなど不備な点があった。昭和二一年一二月に発生した南海道地震は、高知・和歌山・徳島の各県を中心に、東は中部地方から西は九州にわたる広域に主として津波による大きな被害をもたらした。当時の救助では、府県により救助単価が区々であること、救助活動の実施や物資の調達に当たって相互関係機関の連携に統一を欠くなど制度の欠陥が顕在化した。これらの欠陥を正す抜本的立法として、昭和二二年一〇月、「災害救助法」が制定された。
 この法律では、災害に際して応急措置で被災者の保護と社会秩序の保全を図ることを目的とし、①救助の行われる災害の範囲の明確化、②救助の実施責任を都道府県知事とした、③罹災救助の種類の明確化、④救助のための強制権の設定などを規定している。内容をみると、市町村あるいはそれを包括する都道府県の人口に応じて相当数の世帯が被災した場合には、「災害救助法」を適用し、応急仮設住宅等の収容施設の供与、食品の給与及び飲料水の供給、被服・寝具等生活必需品の給与・貸与、被災者の救出等の被災者救助措置を講じるものとしている。
 愛媛県では、昭和二三年四月一三日、「災害救助法施行規則」(県規則第一八号)を定め、前年の一〇月三〇日からこれを適用した。それによると救助の方法として、①収容施設の給与、②炊出しその他による食品の給与、③被服、寝具、その他生活必需品の給与又は貸与、④医療及び助産、⑤生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与、⑥学用品の給与、⑦埋葬、⑧罹災者の避難のための移送及び救済用物資の輸送、⑨救助のため必要な人夫傭上げとなっていた。同規則は、昭和三三年七月と同三五年三月、法改正に伴って一部改正され、新たに災害にかかった者の救出、災害にかかった住宅の応急修理及び障害物の除去などの項目が対象として追加された。
 愛媛県における災害救助法の適用状況をみると、表3-2のようである。国土荒廃のいちじるしかった昭和二〇年代には、毎年のように適用されていたことがわかる。災害の原因としては、昭和二三年の長浜町大火以外は、台風もしくは豪雨による風水害となっている。
 災害救助の要する費用は、救助を行った県が支弁することとされ、国では県が支弁した費用の一部について一定の割合で負担することとされている。こうした救助費用の財源にあてるため、県では普通税収入額(前三か年)の平均額の千分の五相当額を災害救助基金として積み立てることとされている。

 災害応急対策と災害対策本部

 災害時令災害のおそれのある場合、被害を最小限にとどめるための応急対策については、従来明確な法体系や体制がなかった。前述の「災害対策基本法」は、この点をはじめて明確化し、総合的、統一的な規定を設けている。情報の収集、警報の発令・伝達、避難の勧告・指示、消防・水防活動、被災者の救難、救護などを、国、地方公共団体、公共機関などが緊密な連絡をとりあい、迅速かつ的確な災害応急対策を実施することとした。
 この対策を推進するため、特に必要のある場合には、まず市町村に「災害対策本部」を設置し、さらに災害の状況に応じ必要とあれば都道府県に「災害対策本部」を設置する。一方、国では、非常災害として特別の措置が必要と認められるときは、法に基づき「非常災害対策本部」を設置して総合的な対策に当たることとされている。この非常災害時における応急措置を図示すると、図3-3のようである。
 愛媛県では、県防災会議の作成した「愛媛県地域防災計画」において、災害応急対策計画を定め、県、市町村、県民、関係機関が行うべき応急措置の概要を示すとともに、県の防災組織及び編成、動員・通信・連絡・災害救助法適用・避難・水防など三一項目にわたる詳細な計画を立て、対応することとしている。このうち、県防災組織である県災害対策本部の組織編成については、「愛媛県災害対策本部条例」(昭和三七年県条例第五〇号)及び「愛媛県災害対策本部要綱」によって定められている。それによると、県対策本部が設置されるのは、県下に気象業務法に基づく警報が発令されたとき、県下に災害対策基本法第二条第一項に定める「災害」が発生した場合において知事が必要と認めたときとされている。組織編成は、本部長が知事、副本部長を副知事、出納長と企業長は本部付で特命事務の処理と本部長の補佐、本部員には本庁の部長、副出納長、公営企業局長、教育長、警察本部長ほかをあて、事務局、対策部をそれぞれ編成している。また、支部を五地方局ごとに設置することとしている。
 そして県対策本部は、市町村、指定の行政機関・公共機関など防災機関と緊密な連携をとって応急対策に当たることとしている。防災機関には、各種通信網、放送機関、気象台、医療機関、輸送機関、公安機関、水防組織、自衛隊、電力会社などがある。
 なお、災害救助法の適用についても、前記災害応急対策の該当各項において、それぞれ措置基準が定められている。

 災害時の情報・通信体制の整備

 災害時における情報の収集伝達のため通信は不可欠のものであるが、特に、無線通信は災害時において極めて有効な通信手段である。災害対策用の無線として吽中央防災無線網、消防防災無線網、都道府県防災行政無線網、市町村防災行政無線網、防災相互通信用無線などがある。これらの防災無線のうち、まず消防防災無線網の整備が昭和四一年度より開始された。さらに、昭和四三年五月の十勝沖地震を契機に、より機能的な防災体制の確立が要請され、四五年三月には都道府県防災無線網の開設が認められ、四八年以降、この整備に対し国庫補助が行われることとなった。また、市町村防災行政無線は昭和五三年からその整備への国庫補助並びに無線局の開設が認められた。国の各省庁、災害対策と関係の深い公共機関を結ぶ中央防災無線網は、国土庁が昭和五三年度より整備を進めたものである。
 以上のほか、警察庁、防衛庁、海上保安庁、気象庁、建設省、国鉄、電力会社等は、それぞれ所掌事務の円滑な運営を図るため、全国的な通信網を構成している。これらの通信網を示すと、図3-4のようである。
 愛媛県では、昭和五七年九月一日に愛媛県防災行政無線が開局した。このシステムは図3-5のとおりである。これによると、県庁内に設置されている統制局を中心として、直接あるいは一〇か所の中継局から一一支部局へ、さらに端末局(県出先機関、市町村、消防機関、防災機関)へと結んだ通信網である。このほか、移動局八五局を県下全域に配備し、現場からの的確な情報の収集、伝達を行うこととしている。

表3-2 愛媛県における災害救助法の適用状況

表3-2 愛媛県における災害救助法の適用状況


図3-3 非常災害発生時の主な応急措置

図3-3 非常災害発生時の主な応急措置


図3-4 防災関係通信網

図3-4 防災関係通信網


図3-5 愛媛県防災行政無線回線構成図

図3-5 愛媛県防災行政無線回線構成図