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愛媛県史 社会経済5 社 会(昭和63年3月31日発行)

一  『民力』に見る愛媛県民の生活エネルギー

 『民力』は昭和二五年(一九五〇)以来毎年発行されているが、その中から五年間隔で実態を提示して見る。

 人口の推移と、産業別人口構成

 四国各県と、比較のため東京都を示しているが、徳島・高知は激減、愛媛・香川は微増である。全国を一〇〇とした構成比を見ると、昭和二五年(一九五〇)にはそれぞれ一%を超えていたのが、一九八五年には愛媛を除き一%以下となっている。それに比較して東京は二%以上増加して都市集中の傾向が如実である。なお四国の全県で七〇年頃より漸増の様子も見える。
 産業別構成比では第一次産業が、全国で一〇%を下回ったのに対して愛媛では一九八二年現在一八%を超えている。

 民力指数の推移

 朝日新聞社民力編集部によると、民力とは「生産・消費あるいは文化などの国民のもつエネルギーの所産を、総合的にとらえたものである。」とし、したがって正しくは国家経済や産業そのものではなく、それを支えるエネルギーの動きを現象から追求しようとするものである、と付説している。しかしこれから示す種々のデータは統計的なもので、上記の説明では不十分かもしれない、それはデータからくる制約が極めて多いからであるとしている。
 これから示す民力は上の意味に沿って二四の指標から構成されているが、それらは次の通りである。
 基本6(人口、世帯数、事業所、個人所得、国税、地方税)
 産業活動6(農業粗生産額、林業、水産業、工場数、工業製品年間出荷額、就業者)
 消費6(商店年間販売額、電灯、預貯金、一般公共事業費、着工住宅、自動車)
 文化6(教育費、書籍雑誌、新聞、テレビ、電話、郵便)
 なおこの指数は昭和三二年(一九五七)日本赤十字社報道室が、赤十字社の社債募集額設定の参考資料として編集したのが最初であり、全国を一、〇〇〇として各都道府県別構成比を総合平均したものであるが、(この総合平均は算術平均によっている。)それ以降もその方法を踏襲している。従ってこれは都道府県別の住民のパワーを量的に測定しているが、これに対して一人当たりの民力水準は、総合指数を人口構成比で割ってえられたもので、全国平均は一〇〇で、それに対する各都道府県の指数を示している。したがってこれが一〇〇以下であれば全国平均に上昇すべき努力目標を示しているともいえる。
 なおこれには第三次産業、特にサービス業に関する指標が含まれていない、が一応各地方の住民の活力を示しているといえよう。
 愛媛は総合で一九五七年一四・〇から一九八五年一一・四迄低下している。この率は〇・一九で、四国では香川に次いで二番目に少ない方であるが、四国で最も低下率の高いのは高知で、2/3近くになっている。総合指数で+の東京も個人指数では-となっており、四国四県は逆に二〇%前後の上昇を示している。個人当たりの活力の上昇を示している訳である。

 生活満足度

 次に民力と同時に算出されている生活満足度の推移を見ると次の通りである。なおこの水準は一九七五年度から計算されており、その指標は表3-4の通りである。
 これによると四国四県は、+水準は大体平均に近いが、-水準は平均以上が多い。特に目立つ数値は見当たらないが、愛媛の健康水準八五年度-で一四四・六は当時の最高に近い値で、その年精神病患者の数が全国一位とされたためである。

 生活の現代化

 次に生活の現代化指数を見よう。これは昭和四七年度(一九七二年度)からの算出である。現代化とは生活行動つまり私的消費における高密度化であると規定し次のように分析して算出している。(表3-5)
 情報化(書籍雑誌年間小売販売額、新聞配布数、テレビ契約の一人当たり受け入れ量)
 教育化(大学志望率、高校志願率、教育費)
生活近代化(耐久消費材等の普及率について次のようにパターン化している)
 (イ)総合(生活財、レジャー財の平均)
 (ロ)生活財(一〇〇世帯当たりのカラーテレビの台数、タイムスイッチ、電子レンジの数)
 (ハ)レジャー財(ステレオ、ラジカセ、トランジスターラジオ、カメラの台数)
モビリティ化(ガソリン・スタンド数(乗用車一台当たり)、乗用車保有台数(人口比)、普通自動車運転免許者数(人口比))
ファッション化(ラジカセ保有率、女性雑誌配布率(人口比)、短大・大学女子大生数(人口比)、新設着工住宅における共同の非木造住宅率、ウイスキー、ブランデー率((人口比))
 これを見ると愛媛は四国では大体中間に位置している。香川は全体的に少し高く、高知が比較的低い。但し教育化のみ愛媛が一九八〇、一九八五年度に高く出ている。東京は常に高位置にあるが、モビリティのみは都市から適度の距離の県が高く、レジャーもそれなりの県に高い数値が見える。
 これに付随して一九七五年度に発表されている生活充実感指標(表3-6)では、やはり愛媛は何れの項にも中間の値を示している。

 生活水準指標と経済水準指標

 上記朝日新聞社の編集の『民力』その他に対して、愛媛県では独自の指標でそれより先に生活水準指標と、経済水準指標を算出している。(表3-7)
 この数値は偏差値によっており、従って五〇が平均であり、指標は次の一五項目である。
 健康4(環境、栄養、体位、保健) 安全3(環境、危険度、家計) 便利2(家庭生活、社会生活) 快適2(家庭生活環境、社会生活環境) 創造4(教育の普及、教育条件の充実、情報水準、人的資質)
 これを見ると愛媛は、安全水準の外はすべて平均以下となっている。

表3-1 人口の推移(1950年=昭和25年)

表3-1 人口の推移(1950年=昭和25年)


表3-2 産業分類別人口構成比の推移

表3-2 産業分類別人口構成比の推移


表3-3 民力指数の推移

表3-3 民力指数の推移


表3-4 生活満足度の推移

表3-4 生活満足度の推移


表3-5 生活現代化指標

表3-5 生活現代化指標


表3-6 昭和50年度(1975年度)生活者実感指標

表3-6 昭和50年度(1975年度)生活者実感指標


表3-7 愛媛県生活水準指標

表3-7 愛媛県生活水準指標