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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

一一 訴願及び請願


 異議申し立て及び訴願

 未墾地買収に伴う土地所有者の反発は、法的にも、異議の申し立て、訴願又は訴訟となって現れた。
 異議の申し立て並びに訴願提起に際しては、各種の理由が挙げられているが、急傾斜による不適地論、治山治水上で開墾不適地論(終戦以来、毎年のように頻発する水害の原因は、戦時中の山林濫伐の結果説)が非常に多かった。
 そこで、本県では、県農地委員会及び関係課(主として、開拓課・林務課・河港課)が必ず実地踏査を行なって適地の裁決をするなど、特に慎重を期した。
 しかしながら、単に所有欲のみに執着して、反対を唱えるものもなきにしもあらずであった。これらの処理についても、あくまで公正妥当な審査が行なわれた。又政治的にも個人的にも反対攻勢は各所に起こり、これが処理に寧日なき状況であった。
 当時、県開拓課用地係長、長井義明氏は「異議申し立て、訴願、訴訟は毎日のように出た。私どもは、今の食糧事情や敗戦の結果による最善策として開拓政策しかないと確信し、一生懸命、地主さんを説得し、大部分の方々には御納得いただいた。」と語っている。
 第一回未墾地買収から、ようやく買収の大半が終わった第一一回買収(昭二五)までの異議訴願の申し立て状況と処理内容は表3-8のとおり一、三〇〇件に及んだ。
 異議訴願の申し立ての決定にあたっては、慎重を期したのであるが、この決定に不服のある者は、知事、又は県農地委員会を相手として行政訴訟に及んだのである。未墾地買収に伴う、行政訴訟事件は三三件あった。
 昭和二三年二月一〇日、愛媛県森林組合連合会・愛媛県治山協会・愛媛県林政調査会の三者連名による未墾地買収についての請願が参議院に提出された。同院ではこれを採択して、農林大臣にその調査方を委嘱するに至った。
 請願書の内容は、開発不可能な森林を大面積にわたり買収することは、治山治水上、反対であり、具体的には次の七地区の現地踏査を願い出たものである。
 大浜(大生院村) 大峯(三机村) 程野(土居村) 御厩(九和村)
 与和木(九和村) 四ッ浜(四ッ浜村) 堂山(弘形村)

表3-8 未墾地買収にともなう異議訴願件数

表3-8 未墾地買収にともなう異議訴願件数