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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

第二節 市場③


 松山市中央卸売市場水産市場

 松山市の発展に伴い流通の改善、充実が望まれ、建設の陳情書が昭和四〇年九月定例市議会で採択された。同四二年一月松山市は総合方式による基本構想を発表、同四四年一月建設侯補地を決定、同年末久万ノ台に用地を購入した。青果との総合方式か分離方式かについては、当初より意見が分かれたが、同四七年九月の定例市議会で、三津に水産市場を設置する請願書が不採択になり、この問題は一応結着したかに見えた。基本構想の発表以降、「三津の朝市を守る会」を中心とする諸団体は、四七年九月までに一六回の請願を繰り返した。その後も松山市は、総合市場方式による説得を続けたが、理解は得られなかった。たまたま、五〇年三津浜に県の埋立地が完成し、松山市はこの譲り受けを予定して、五二年中央卸売市場整備にかかわる調査を、財団法人食品需給研究センターへ委託した。調査の結果、水産物部の設置は三津港ふ頭が適切であるとした。この報告書に基づき、松山市中央卸売市場開設運営協議会の分離方式が望ましいとの答申を受け、松山市及び市議会でも分離方式に決定、中央卸売市場整備計画を変更し、五三年一〇月、愛媛県から水産市場の用地を買収し、五四~五五年度継続事業で建設が進められ、用地費も含めた総事業費は三九億二、七〇〇万円であった。
 昭和五三年七月、松山水産物地方卸売市場(通称三津魚市場、民営の一市場は入場の意志のないため除く)の卸売八業者は、中央卸売市場入場のため、新会社二社に統合する確認書を提出し、五六年六月新会社を設立、仲卸業者は一七社で、同年九月業務を開始した。仲卸業者とせり売りにも参加できる売買参加者(小売人・加工業者・料理店など大口需要者)は二五七人(五八年七月現在)で、松山市・温泉郡全域はもちろん、伊予郡松前町・砥部町・伊予市・上浮穴郡久万町・北条市・越智郡菊間町・今治市・西条市の広域な範囲に分布している。買出人は中央卸売市場における流通機構の末端(最終段階)で、せり売りには参加できないが、仲卸業者の市場内の店舗で買い受ける。現在二七二人(五八年七月)で、鮮魚商・食堂・スーパーマーケットなどの関係者で占められ、売買参加者よりやや広い分布を示している。
 五六年九月一六日に市場業務を開始した。一二月末までの取扱量は鮮魚三、二七五t、冷凍九二t、塩干・加工品は二四一t、総取扱量は三、六○八tであった。五七年取扱量は鮮魚一万一、八九三t、冷凍一、四七九t、塩干・加工品一、一六六t、総取扱数量は一万四、五三八tであった。松山市水産物地方卸売市場(三津魚市場)の五三年取扱量一万二、八〇九tに比較して一三%の増に当たっている。五八年の取扱量は鮮魚一万二、八一三t、冷凍品一、三三九t、塩干・加工品一、一〇二t、総取扱量は一万五、二五五tで、前年に比較して五%増加を示しているが、冷凍品、塩干・加工品についてはむしろ減少した。これらは共に市場外流通が増加したためであろう。
 さて、五七年取扱量について検討を加えよう。産地別取扱高は、鮮魚については、県内産が六三%を占める。以下高知・徳島・大分・福岡の順で、いずれも比率は僅少である。冷凍品は主として輸入品で占められ、このうち国名又は海域名の表示されたのは、わずかに一三で、総入荷量の五三%は一括して記入され、この結果、原産地は明確ではない。表示国では、西アフリカが最多で一五一t(内九九%タコ)、続いてベーリング一三三t(内カレイ三〇%)、中国六九t(五四%エビ)、静岡四二t(内カツオ七六%)、徳島・北海道・愛媛の順である。外国産冷凍魚はもちろん直送ではなく、大手業者(日本水産高松支社松山連絡所・大洋漁業松山営業所・日魯水産四国支社)からの搬入、神戸・大阪・下関など市場の仲卸業者の転送によるものである。塩干・加工品の最多は県内産で一八八t、次いで北海道一八二t(塩サンマ・塩紅サケ・塩サケ・かずのこが主体)、兵庫一六一t(内八一%ゆでイカナゴ)、千葉一〇二t(内八四%塩サバ、塩イワシ一五%)、西アフリカ九九t(ほぼ全部ゆでダコ)の順である。
 水産市場は、漁船・運搬船から直接水揚げする施設がなく、いったん、内港に接している水産市場荷受所(旧三津魚市場)に水揚げするが、地元漁船(松山市・三津・高浜・今津・和気各漁協)でも軽四による陸送が多い。搬入には鮮魚はもちろん、冷凍・塩干・加工品とも保冷車が使用され、韓国からのタコ・アナゴ(鮮魚)の搬入以外は運搬船の使用は極めて少ない。


表12-13 松山中央卸売市場水産市場規模

表12-13 松山中央卸売市場水産市場規模


表12-14 松山中央卸売市場水産市場卸売業者

表12-14 松山中央卸売市場水産市場卸売業者


図12-24 中央卸売市場の機構

図12-24 中央卸売市場の機構


図12-25 鮮魚の主要品目別取扱数量(昭和57年)

図12-25 鮮魚の主要品目別取扱数量(昭和57年)


図12-26 塩干、加工品の主要品目別取扱数量(昭和57年)

図12-26 塩干、加工品の主要品目別取扱数量(昭和57年)


図12-27 鮮魚の主要産地別取扱高(t)とその主な魚種

図12-27 鮮魚の主要産地別取扱高(t)とその主な魚種


図12-28 冷凍品の主要産地別取扱高 

図12-28 冷凍品の主要産地別取扱高 


図12-29 塩干加工品の主要産地別取扱高(t)昭和57年

図12-29 塩干加工品の主要産地別取扱高(t)昭和57年