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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

第一節 漁家経済①


 海面漁業漁家の経済と経営

 海面漁業漁家は、養殖漁業を除いた漁船漁家のことで、農林水産統計では漁船t数(一t未満、一~三t、三~五t、五~一〇t)の階層別に調査されている。昭和五二~五七年までの統計資料で検討することにした。愛媛県の漁船漁家の平均所得は、昭和五七年は三八八万一、〇〇〇円で、五四年をピークにして大幅に減少している。さらに家計費が増加したこともあって、漁家の経済余剰は昭和五二年の二〇%にも及ばない。漁家の階層別所得は、上位の階層に進むに従って所得の増加することは勿論であるが、特に五~一〇tの階層で漁家所得が急上昇している。この所得のうちで漁業所得の占める割合を漁業依存率と呼ぶが、これによると、一t未満の階層で一〇~二四%、一~三tは三二~四二%、三~五tは四九~六八%、五~一〇tの階層では五九~七三%を示し、階層間の落差が大きい。これは下位の階層に移るに従って漁業外所得(農業・水産加工業・商業などの漁業外収入、労賃収入などの事業外収入)の占める割合が増加するためである。漁家所得のうち漁業所得が家計費(生活維持のための経営的支出、吉凶・慶弔などの臨時支出、家計用の建物などの費用を含む)に占める割合、すなわち漁業充足率の愛媛県の漁家平均は、昭和五四年は七〇・七%であったものが、五七年にはついに五〇%を下回った。この充足率は県の農家平均の充足率に比較してなお高い。
 つぎに漁業経営のうち漁家の漁業収支をグラフに示した。これによると、漁業支出の漁業収入に占める割合は、県平均で昭和五二年は四五%で、五三年四一%、五四年三八%、五五年四二%、五六年四六%、五七年はいままでの最高の五三%に達している。階層別では一t未満に低いことはもちろんであるが、三~五tの支出比率が、いずれの年度も五~一〇t階層の支出比率を上回っている。漁家平均による漁業支出は、雇用労賃・油費・減価償却費の比率が特に高い。このうち油費は昭和五二年一八%であったものが、五七年には三〇%を占め、減価償却費も一七%から二四%に増大した。これに対して雇用費は五二年の二八%から五七年には一六%になって大幅に低下し、省力化の進んだことを示している。


表12-1 漁家の経済(1戸当たり)

表12-1 漁家の経済(1戸当たり)


図12-1 漁家所得の推移

図12-1 漁家所得の推移


図12-2 漁船トン数階層別漁家所得(1戸当たり)

図12-2 漁船トン数階層別漁家所得(1戸当たり)


図12-3 漁業依存度の推移

図12-3 漁業依存度の推移


図12-4 家計費充足率

図12-4 家計費充足率


図12-5 漁家の漁業収支

図12-5 漁家の漁業収支


図12-6 費目別漁業支出割合(1戸当たり)

図12-6 費目別漁業支出割合(1戸当たり)