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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

一 愛媛農政における果樹の生産振興方針


 愛媛県新農業政策(四八年)

 愛媛県は、農業をめぐる情勢変化に対処するため、「新農業政策策定会議」を発足させ、四五年を基準に五五年を目標とする本県農業の将来方向についての検討を行い、その結果を四八年三月に公表している。新農政のねらいの一つは「新しい農業地図」の策定と推進にあり、基幹となる重点作目の生産振興方針がそれぞれ示されている。果樹については、以下の通りである。

  1 かんきつ

 (一) 瀬戸内臨海部の山ろく、島しょ、および宇和海一帯の既成主産地を中心に、高能率生産団地の形成を軸として、生産性向上のための再整備を行う。なお、生産性の低い老木園等については、果樹園の再開発事業を進め、需要動向に即した品種系統に改植更新する。
 (二) 需要にみあう優れた品質の生産を目ざして、栽培、貯蔵、管理等、技術の高度化と平準化を進め、品質と収益性の向上をはかる。とくにミカン中心の生産構造から脱皮するため、本県の特性を生かした優良晩かん類の振興をはかる。
 (三) 樹園地の集団化、農道・作業道の整備、樹型の改造等、土地基盤の整備を進め、急傾斜地の不利な条件を克服するとともに、多目的スプリンクラー、スピードスプレヤー、モノレール等、高性能機械化体系の導入を促進する。
 (四) 需要の高級化に即し、産地銘柄を確立するため、出荷期別、品質別の地帯区分を設定し、品質管理体制を強化する。なお、出荷調整、品質管理、労働力調整のため、貯蔵施設の整備を進める。
 (五) 優良品種の開発を促進するため、試験研究機関の整備および新品種育成ほ場の拡大をはかる。また農業者の協力を得て、試作調査を行う。

  2 カキ・クリ

 (一) カキは、新居・周桑・喜多・東宇和・北宇和地域の中山間地帯、クリは、伊予・上浮穴・喜多の中山間ないし山間地帯で、既成産地を中心に特産地化を進める。
 (二) とくに山間ないし中山間の産地条件に即して、園地の集団化、農道・作業道の整備等、基盤整備を進め、高能率防除機械等、省力技術体系の導入を促進する。
 (三) 競争力のある銘柄品を育成するため、優良品種の普及、栽培技術の高度化、共同出荷体制の整備を推進する。


 愛媛県地域農業基本政策(五五年)

 愛媛県は、八〇年代の愛媛農政の方向を明らかにし、地域主義県政の基盤作りのため、「地域農業基本政策会議」を設置し、五三年を基準年次、六〇年(中間)、六五年を目標年次とする愛媛農業の長期計画を審議することとし、その結果が五五年九月に公表された。そこでは、六つの地方生活経済圏と一二の広域営農圏が設定され、主要作目の生産振興方針が示されている。果樹は以下の通りである。

  1 かんきつ
   果実需要の多様化や輸入自由化攻勢に対処し、かんきつ生産体制を改善するため、計画的な生産の再編成を推進し、ミカンの過剰基調の是正と、産地の体質強化をはかる。

 (一) 晩かん類への更新は、適地性、品種選定、市場出荷力等に留意しつつ、「かんきつ全体で需給均衡を達成する、周年供給体制の確立をはかる、かんきつ全体の所得の確保に努める」ことを基本として推進する。
 (二) 全国市場における主導的な地位を維持するため、高品質、低コストのかんきつ生産を推進するとともに、消費者ニーズに適応した優良品種の開発普及に努め、産地銘柄品の確立をはかる。また新品種の導入については、市場価格の動向を見きわめながら、希少価値の実現をめざし、三、〇〇〇~五、〇〇〇t規模の高品質産地を計画的に育成する。
 (三) 個別経営における品種構成の多様化をすすめるとともに、ミカン園の不適地については、クリ・カキ・モモ等落葉果樹への転換を推進し、地域に即した複合果樹生産団地の形成に努める。
 (四) 園地の基盤整備、交換分合、灌水、防除、運搬等省力施設の導入、地力の増強、園地の再整備を促進し、傾斜樹園地の生産体制を整備する。
 (五) 選果施設、貯蔵施設等流通基幹施設の整備および情報収集と集出荷に関する中枢管理機能の強化をはかり、市場出荷力の向上に努める。とくに晩かん類については、商品性を高めるため、着色、熟成機能をもつ貯蔵施設の整備拡充をはかる。
 (六) 加工原料用果実の価格安定制度の適正な運用を進めるとともに、果樹所得共済方式の制度化に努める。

  2 カキ・クリ

 カキ 喜多・周桑など既成産地を中心に産地拡大をはかり、質・量ともに市場競争力を高めるため、園地の集団化、土地基盤および防除施設等を整備し、省力化を促進するとともに、品質管理の適正化に対応した選果貯蔵施設等の拡充整備をはかる。

 クリ
 (一) 伊予・上浮穴・喜多・東宇和・北宇和など中山間地帯を中心に主産地形成をはかり、省力化と生産安定のため、間伐、樹形改造を徹底するとともに、樹齢構成に配意した計画的植栽により団地の若返りをはかる。
 (二) 市場競争力の強化、加工原料の安定供給を推進するため、選果機、冷蔵施設など、流通施設の整備拡充をはかる。


 愛媛県果樹農業振興計画

 第六章第一節でふれたように、三六年に制定された「果樹農業振興特別措置法」によって、国は「果樹農業振興基本方針」を定め、それをうけて都道府県は、それぞれ「果樹農業振興計画」を策定することになっている。愛媛県でも、果樹農業振興計画は下記の通り作成されている。

     (作成年月)      (計画期間)
 (一) 四三年三月   四二年度-五一年度
 (二) 四八年三月   四七年度-五六年度
 (三) 五二年三月   五一年度-六〇年度
 (四) 五七年三月   五六年度-六五年度

 この計画の中でもっとも重要な点は、果樹の生産から集出荷まで一貫した体制を確立して強力な市場競争力を持つ「広域濃密生産団地」を形成することであり、愛媛県では、表7-10に掲げたように、かんきつで九団地、カキで二団地、クリで五団地が指定され、これら濃密生産団地を主体に、大規模果樹生産流通基地整備事業などの各種事業が進められている。



表7-10 果樹濃密生産団地形成予定地域 (昭和57年)

表7-10 果樹濃密生産団地形成予定地域 (昭和57年)