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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

二 落葉果樹


 梨の伸長

 落葉果樹においては、明治末期から増植が進行していた梨が、大正時代になって更に急速な伸びを見せた。大正初期の一〇年間に、産額(九四万貫から三〇四万三、〇〇〇貫)で三倍以上となり、温州ミカンの二倍増をはるかに超える状態となった。梨は温州ミカンよりも資本回収が速いことから、資本力の少ない農家は、その栽培に魅力を感じたものであろう。ところが、この梨の好況にかげりが見え始め、大正一二年ころからの整理期を迎えることになった。その直接的要因は、大正後期に始まる経済不況による価格低落とヒメシンクイムシの被害激化であった。梨の基本的な適地性の問題が提起されたのは、昭和に入ってからのことである。その他の落葉果樹では、リンゴが樹勢の老衰化や綿虫被害による後退が激しくなり、桃・枇杷が漸増の傾向をたどった。柿は大正七年富有柿の導入開園と、大正二年あたご柿の優良系統選抜によって、栽培が軌道にのり始めた。栗は中山町を中心に生産の拡大が進行した。