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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

二 勤労奉仕


 勤労奉仕の実践大綱

 戦争の進展に伴う労働力の減少に備え、農林省は昭和一二年八月に、各府県に対して次の勤労奉仕施設要綱を通達し、これに基づき農村内の隣保相助体制が全国的に確立された。

        勤労奉仕施設要綱(農林省)

  一、勤労奉仕班は隣保共助の精神に則り勤労奉仕に依り応召農家の労力欠乏 馬匹徴発等の為に生ずる農林漁業経営上
   の支障をなからしめ応召農山漁家の生活の安定を圖り而して軍需品の供出に協力する等 事変に対し善処することを目的
   とす

  二、右の目的を達成するため左の事業を行うこと
  (一)応召による労力不足又は馬匹等の徴発の為に農林漁業の経営困難なる者に対し労力補給をなしその経営に支障なか
    らしむること
  (二)軍需品の供出に当りては村内夫々の機関に協力すること
  (三)その他右に準じ適切なる事業を実施すること

  三、勤労奉仕班の組織は左の如くすること
  (一)町村経済更生委員会に勤労奉仕部を置き之に農会 産業組合 学校その他町村内各団体の代表者並びに町村内の
    有志を参画せしめ是等の協力一致に依り各部落に勤労奉仕班を編成すること
  (二)各部落の勤労奉仕班は勤労奉仕部の指導の下に部落内各種団体の協力一致に依り部落内の勤労奉仕に適する者を
    以て適宜之を編成すること
  (三)勤労奉仕部は各部落勤労奉仕班の連絡統制を圖り労力の調整並に勤労奉仕の計画を樹立し臨機応変の処置を講じ
    得る様予め準備し置くこと
  (四)勤労奉仕部は隣接町村の勤労奉仕部と連繋を保ち必要ある場合に於ては町村間の相互援助をなし得る様予め準備し
    置くこと
  (五)町村経済更生委員会の設立なき町村に在りては取敢ず之に準ずる組織を編成し以て之が実施を為すこと
  (六)勤労奉仕班は応召者又は徴発等多数にして其の必要緊切なる町村より順次之を編成すること

 勤労奉仕班と活動

勤労奉仕指導項目(愛媛県)
   一、労力補給対策
   二、輸入農産物の自給対策
   三、共同作業の拡充対策
   四、授産対策
   五、肥料対策
   六、軍需飼料の供出対策
   七、実行小組合の拡充対策
   八、漁村対策

 県はこの通達をうけ昭和一二年九月二日に、知事以下の県の関係部課長と農業関係の八団体(県農会・県養蚕組合・山林組合・信用連合会・県購連・伊予果物組合・畜産組合・水産組合)と町村会の代表者五〇余名を招集して農山漁村の戦時体勢整備に関する会合を開き、(一)農山漁村における勤労奉仕施設要綱 (二)町村勤労奉仕実行組織要綱 (三)農山漁村における勤労奉仕実施上の注意事項 について協議し、上記の各項について指導方針を決定した。さらにこの方針に基づき当面の実践項目として (一)町村に勤労奉仕班とその実行組織を設置し軍務公用者家族に対して労力を提供奉仕すること (二)共同作業の拡充強化を図ること の二つが決議され、直ちに各町村で勤労奉仕団が編成された。同年一一月に県産業督励部も町村経済更生委員会と協力して集落ごとの勤労奉仕班の編成を指導督励し、昭和一二年末には県内全市町村の全集落で二、〇〇〇の組織が結成された。集落の勤労奉仕班は壮年部、青年部、婦人部、少年部の四部で編成され、市町村勤労奉仕部の指導により実行小組合を母体として各種団体との密接な協力下で活動し奉仕の実績をあげた。

 都市の援農活動

 戦争四年目の昭和一五年には、労働力の不足がますます深刻となり、農村内の共同作業、隣保相助の勤労奉仕活動のみでは農繁期の適期作業の完遂が困難となり、農村の内外の非農家による勤労奉仕の応援隊が編成され、農村へ出動するようになった。昭和一五年秋の刈取作業には県内の会社、工場から一、二〇〇人の労働者が勤労奉仕に出動し、一六年春の農繁期には、今治市内の各種団体が麦刈作業に協力し、同年秋の稲刈作業に西宇和郡では酒六工場、朝日紡績の産業戦士によって編成された移動労力奉仕隊が郡内各町村に出動して注目された。
 昭和一七年の一一月には道後町内の住民により勤労報国隊が結成され、近村の収穫作業に協力したが、この時期から都市の町内会、各職場で編成された勤労奉仕隊の出動が急激に増加した。