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愛媛県史 地誌Ⅱ(南予)(昭和60年3月31日発行)

三 南予レクリエーション都市


 見る 楽しむ 憩う 学ぶ 鍛える

 南予レクリエーション都市は、リアス海岸の美しい自然と豊かな民情にあふれた風土のもとに、緑と海をテーマとして、「見る・楽しむ・憩う・学ぶ・鍛える」とうたった施設の建設による快適なレクレーション都市づくりをめざしている。
 新全国総合開発計画では、大規模レクレーション都市建設を主要課題としているが、これにより昭和四七年五月、南予地域は大規模海洋性レクリエーション都市として国の指定を受け、「千葉レク」・「紀伊長島レク」に続いて、宇和島市と南宇和郡、北宇和郡の海岸地域がその指定対象となった(図7―8)。
 南予レクリエーション都市の建設は、愛媛県において今後予測される国民の自然観光レクリエーション活動の動向を背景とし、建設省の都市公園整備五か年計画に基づくものであり、大規模な都市計画公園として総合的な開発をめざして、昭和四七年以来着々と事業が進められてきた(表7―24)。
 レクリエーション需要圏域を中国・近畿・四国・九州が主体となるものと予測し、宇和島市、北宇和郡吉田町・津島町、南宇和郡内海村・御荘町・城辺町・西海町の一市六町村にまたがる三万三〇九六ヘクタールを都市計画区域としている。事業期間は、当初昭和六〇年完成を目標として次の三期に分けられた。
 第一期(昭和四七年から五一年)用地の取得を主体とし、あわせて施設の建設を行なう。
 第二期(昭和五二年から五五年)施設の建設を強力に推進するとともに用地の取得を併行して実施する。
 第三期(昭和五六年から六〇年)施設の拡充・整備に努める。
 諸情勢の変化によって事業期間は修正され、六〇年以降も継続実施となったが、諸施設の建設が着実に行なわれている。
 計画の大要は、公園施設として、民営を含め、公園(広場、動植物園)、運動施設(プール、競技場)、教養施設(自然観察園、野外劇場)、簡易宿泊施設(キャンプ場)、交通施設(園路、駐車場、ロープウェー)を整備する。関連公共事業としては、通路、河川、港湾、下水道、市街地開発など、交通体系や生活環境を整備する。さらに、第三セクター南予レクリエーション都市開発株式会社(昭和四八年六月一四日設立)などの民間事業によって、ホテル・保養所・別荘・ショッピングセンター・会議場などのサービス施設を完備するなどである。
 宇和島地域、津島地域、御荘・城辺地域の三地域が、南予レクリエーション都市構想の拠点として計画されているが、宇和海全域に対する結びつきを考慮した道路網の整備、また地域産業及び生活社会との関連に重点を置いて、地域活動の進展に波及するよう計画が進められている(表7―25)。

 宇和島地域

 南予における中核都市である宇和島市を中心とする地域であり、南予レクリエーション都市の管理中枢および海上・陸上・鉄道等の交通拠点としての整備を、市街地整備と併せて総合的に推進する。レクリエーション施設は既存施設の利用と吉田湾、宇和島湾及び宇和海の離島地区などの適地を対象として、地域産業との調整を図りながら都市公園などのレクリエーション施設あるいは休泊施設などを計画する。
 第六号公園(日振島)における整備事業が進められている。五四年七月にオープンした目崎休憩所は年間(七・八月)八千人前後の利用があり、大入キャンプ場は整備進行中であるが、五八年夏にすでに若干の利用があった。

 津島地域

 南予レクリエーション都市の中核基地として、北灘湾及び周辺海域あるいは由良半島の適地を選んで、地域産業の利用促進を図りながら、大規模な都市公園などのレクリエーション施設・休泊施設などを配置するものとし、総合的な都市計画として開発することをめざしている。
 第一号公園(近家地区)、第二号公園(国永地区)、第四号公園(本干拓地区)が設定されている。第一号公園(南楽園)では、上池・下池の二つの池を中心に自然風景を整え、山・里・町・海をテーマにした四国最大の規模を誇る人造日本庭園一五万三、三二二㎡がほぼ完成し、昭和五九年四月一日仮オープンした。特に花しょうぶ園は好評を博し、四月の入園者約五万人、五月の連休時には一日八千人という盛況であった(図7―9)。

 御荘・城辺地域

 宇和海海中公園を含む自然公園を主軸に、隣接地区としての立地及び地域の産業計画を考慮に入れ、総合的な都市計画を基に、御荘湾、太平洋沿岸の適地を対象として、レクリエーション施設及び休泊施設などの配置が進められてきた。
 現在、最も事業計画がはかどっている地域で、第三号(馬瀬・大森山地区)、第五号(貝塚・長崎地区)両公園の構想が大きく前進している。御荘地区には、すでに「御荘湾ロープウェイ」と「展望タワー」が昭和五二年八月に完成したが、このロープウェイは、御荘湾をひとまたぎにし、「海を渡るゴンドラ」といわれる延長一五五〇mの、日本初めての海上横断式施設である。ロープウェイの終点、標高一六五mの馬瀬山頂に設けられた高さ百m、回転昇降式の展望タワーからは、宇和海を眼下に見おろし、遠く九州の山々や四国の連山が手にとるように展望できる(表7―26①)。
 城辺地区では、五二年三月に面積〇・九ヘクタールの大森児童公園が完成した。これは、子供達の夢や希望をできるだけ実現可能にするため、城辺小学校の一年生から六年生を対象として、公園に対する希望、要望などを図画に表現させて、それを配慮し、検討し採用して造られたものである。五三年三月には、面積三・一ヘクタール、桜二千本を植栽した桜園が建設されたほか、同年七月一日には、四国屈指の運動公園として、野球場・多目的広場・テニスコート(いずれも夜間照明設置)も完成した。さらに、五八年三月には三㎞のサイクリングロードも完成した(表7―26②③)。

 施設利用状況

 御荘町の入り込み観光客数の推移をみると、南予レクリエーション都市の建設にともなって増加してきたことがうかがえ(表7―27)、四八年以後急増しており、五四年から五六年はいずれも五〇万を超えているが、そのほとんどは日帰り客である。
 城辺町では、五七年における域外観光客を二万八三三五人としている。これは、鹿島・南レクタワー・プールへの入り込み客一五万九七一三人、四国八十八か所巡礼五万一〇〇〇人、サンパール入り込み二万四〇〇〇人、計四五万七一三人のうち二万二五三五人が城辺町に立寄ったものと推定し、それに釣客などを加えたものである。
 愛媛県から多くの施設の委託を受けて、運営に当たっている南予レクリエーション都市開発(株)では、各方面へのPR活動を進めるとともに、南レク行事として各種の行事を開催している(表7―28)。おもな施設の利用状況をみると、ロープウェイ・タワーは五八年度には五万六〇〇〇人に減ったが、五三・五四年度は六万人台、五五年度から五七年度にかけては、各年度とも七万人を超える利用があった。かつて五五年度にそれぞれ一五万七〇〇〇人、九万七〇〇〇人の利用があった紫電改展示館、子ども動物園は漸減して、五八年にはそれぞれ六万七〇〇〇人、四万三〇〇〇人となった。御荘プールも五三年度から五五年度にかけては一〇万人を超える利用があったが、五八年には七万三〇〇〇人余りとなった。いずれの施設についても夏季型であり、ロープウェイ・タワー・子ども動物園・紫電改展示館について月別利用者をみると、七~八月に四○%から五〇%が集中しており(大部分は八月)、次いで四~五月が多い。運動公園については、第五号で年間約三万人、第三号では約五万人の利用があり、四月から一〇月にかけて平均した利用(第五号では一か月三〇〇〇人から四〇〇〇人、第三号では四〇〇〇人から五〇〇〇人程度)がある。なお、南レク・ロッジの宿泊者数は年間四〇〇〇人余り、サンパールの宿泊者数は年間八〇〇〇人余りである。ほかに、サンパールのレストラン・売店・喫茶・ボーリングなどの利用者約二九万人(五七年)、レストハウス須の川の利用者五万三〇〇〇人余り(五七年)が数えられる。
 南予レクリエーション都市開発(株)では、五三年より毎年、御荘プール利用者を対象にアンケート調査を行なってきた。それによると、利用者の地域分布に大きな変化が認められる。
 五四年四月の松尾トンネルの開通をはじめとする交通路の整備によって、松山方面からの時間距離が急速に短縮されたこともあって、五五年までは松山からの利用者が最も多かったが、その後松山市をはじめ中予地域、大洲・八幡浜地域が大幅に減って、宇和島市以南の地元市町村、宿毛市を中心とする高知県幡多地方など、プールまで一時間以内の近距離者の比率が高くなった(表7―29)。
 遠距離客が減少した背景としては、五六年に伊予市に愛媛厚生年金休暇センターのレジャープールがオープンしたこと、五八年七月四日に大洲運動公園プールがオープンしたことによるプール利用客の流れの変化があげられる。
 プール利用者の過半数は家族連れであるが、「友人と一緒に」が増えて約三〇%になっている。三分の二は日帰り客であって、この地域に宿泊する場合でも四分の一余りは親類・知人宅である。乗用車で来る者が多く約六〇%を占め、次いで定期バス一七%、自転車・バイク一一%余りとなっている。
 また、このアンケート調査によると、海洋性レクリエーション都市をうたっている南予レクリエーション都市には、やはり海を利用した施設に対する期待が大きく、「水族館・マリンランド」「釣り施設」「キャンプ場」建設の要望が多い。










図7-8 南予レクリエーション都市計画区域

図7-8 南予レクリエーション都市計画区域


表7-24 土地利用の計画

表7-24 土地利用の計画


表7-25 南予レクリエーション都市地域別施設一覧

表7-25 南予レクリエーション都市地域別施設一覧


図7-9 南レク日本庭園平面図

図7-9 南レク日本庭園平面図


表7-26 御荘・城辺地区のレクリエーション施設の営業状況①

表7-26 御荘・城辺地区のレクリエーション施設の営業状況①


表7-26 営業状況②

表7-26 営業状況②


表7-26 営業状況③

表7-26 営業状況③


表7-27 御荘町入込観光客の旅行形態別人数

表7-27 御荘町入込観光客の旅行形態別人数


表7-28 昭和58年度南レク行事・合宿実績表

表7-28 昭和58年度南レク行事・合宿実績表


表7-29 御荘プール利用者の地域分布

表7-29 御荘プール利用者の地域分布