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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予東部)(昭和63年2月29日発行)

五 新居浜市の都市圏

 通勤・通学圏

 昭和五五年の新居浜市内における就業者数は六万○○二〇人で、そのうち九・一%に当たる五四八七人が他の市町村からの通勤者である。新居浜市から他の市町村へ通勤している者は三八五八人であるので、差し引き一六二九人の流入超過である。就業者の交流範囲は、西は松山・今治から東は香川県高松市まで広がるが、新居浜市への通勤が多く、新居浜市への流入が流出を上回っているのは、西は西条市・小松町・丹原町、東は土居町であって、東予市・川之江市・伊予三島市に対しては流出の方が多くなっている。香川県西部からの通勤については転勤、転居に伴うケースが多い(表4-38)。
 通学圏についても、鉄道交通の利便さもあって、今治市から川之江市にかけての広い圏域が認められる。
 新居浜市から他の市町村への通学は、隣の西条市及び土居町と今治市への比重が高く、小松町・丹原町や、川之江・伊予三島両市への通学は少ない。一方、新居浜市への通学は広範囲にわたっており、小松・丹原両町からも若干の通学があるほか、川之江・伊予三島両市からは相当数の通学がある。なお、新居浜市から他市町村への通学のうち、松山市と香川県高瀬町への通学がかなりの数に上っているが、これは、松山へは私立城南高校へのスクールバス利用によるケースであり、高瀬へは、私立上戸短大への通学である。

 商 圏

 「瀬戸内産業文化研究」(桃山短大)では、新居浜市の商圏について、市内の商業施設を利用するもの及び新居浜市に隣接する他の市村町ではあるが、新居浜市内の商業施設を利用するものを含めて商圏と考えることができるとして、商圏人口を、市内人口プラス隣接または周辺人口の一部を加えたもの、即ち実質的には市内人口プラスその二〇%程度とみている。それに基づいて、昭和五六年現在の新居浜市の商圏人口を一四万四七九九人と算出している。
 昭和五七年における愛媛県の人口一人当たりの小売販売額は六三万一六四六円であるが、これに対して新居浜市のそれは七三万二〇三二円であり県の平均値を一五・九%上回る水準となる。これは小売中心性水準値一一五・九と示され、一地方における小売中心地としての地位にあるといえる。しかし、新居浜市のこの小売中心性水準値は、松山市の一三二・六、宇和島市の一三〇・〇、今治市の一二七・〇、八幡浜市の一二〇・一に比べると明らかな格差がみられ、周辺地域の購買力を吸引する小売中心地として「求心力」にいまひとつ力不足の状態である(図4-33)。
 新居浜市は、松山市と今治市の商業勢力の圧力を受けて、商圏の西方への拡大を阻まれるという構造の下にある現実の中で、その機能の展開可能性を川之江市から西条市の間の範囲にほぼ限定された状況といえる。そして、西条以東の圏域の中においても、東は伊予三島市の商業力水準が新居浜市に匹敵するものをもっており、土居町の津根・野田地区以東を独自の商圏とする勢いである。一方西部では、西条市が、中心商店街の環境整備事業と大規模小売店舗の進出との効果を次第に発揮しはじめることにより、商業力水準を着実に強化(小売中心性水準値が五四年の八八・四から五七年には九五・四に上昇した)してきており、次第に固有の商圏を確立しようとしてきている。このような状況の下で、新居浜市がいかに広域商業圏の中心としての地位を保っていくことができるかが注目される。





表4-38 新居浜市における就業・通学の状況

表4-38 新居浜市における就業・通学の状況


図4-33 新居浜市の業種別販売額の主要都市間比較

図4-33 新居浜市の業種別販売額の主要都市間比較