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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

二 観光地の種類

 観光地の形成

 観光資源が多くても、それが低い評価のものであったり、自然か人文の資源のどちらかに偏っていたり、さらには交通が不便で宿泊施設が十分なかったりすると、観光地として発展しにくい。言いかえると、資源がせまい範囲に集まっていて、しかも多彩で、その幾つかが全国的あるいは地方的に知れわたっており、交通の便がよくて宿泊にも都合がよいところがすぐれた観光地となる条件である。しかも、宿泊施設は、サービスを提供することで観光客に慰安・休息を与えるところとなる。
 県内で最大の観光地は松山市で、年間三〇〇万人を超える観光客を集めているが、それは松山城や石手寺、子規堂などの観光地が集中していることに加えて、何よりもまず道後温泉郷があることが大きくあずかっている。温泉は、日本人にとって昔から休養と慰安の場となってきたが、とくに道後温泉郷は、旅館・ホテルの収容力も大きく、県内外からの交通の便がいい。しかも、四国で唯一最大の温泉場で、四国一周の観光にとっても滞留するのに、日程や交通条件のうえで優れている。
 このように、観光資源のあるところが観光地へと発展するには、各種の条件があるが、なかでも交通の便が最も重要である。交通の便がよくなると、優れた観光資源のあるところを周遊することが多くなる。宿泊施設や交通機関が整った観光地を互いに結ぶ「観光ルート」の沿線に、観光地がつながって、途中停車して見物するという行動が行われるのも、交通の便利さによっている。

 観光地の種類
 
 県内には多くの観光資源があるが、そのすべてが観光地となっているわけではない。さきにふれた観光地として発展する条件が備わる必要があるが、それにしても全国的ないしは地方的に知られた観光地と、地域の人びとにのみ親しみをもたれている観光地とがある。それは、観光客の行動によっても次の二つに分けることができる。宿泊客が多く集まる滞留型の観光地と、日帰り型の観光地である。
 滞留型とは、道後温泉のある松山市に代表されるし、季節によっては宿泊客のある石鎚山や面河渓谷一帯、大きな祭礼のために参拝客が宿泊する大山祗神社のある大三島町宮浦、また南予レクリエーション都市の宇和島市や御荘町などもこの例である。これらに対して、大洲市の「いもたき」や県内に多い祭礼、そのほか休日の行楽に訪れるところなどは数多く、ほとんどが日帰り型である。
 県内の主要な観光地として全国的に知られているところは、松山市をはじめ石鎚山・大三島・今治市など九か所ほどがある。これらは観光資源の評価が先にふれたように地方的に知られているBランク以上あるところで、しかも宿泊の年間収容力が三〇万人を超えるところでもある(表8-3)。この主要な観光地は、資源のランクや交通条件などからみて、観光地としての魅力が松山市を最高に宇和島市までが点数評価によって六以上であるが、その全国順位は決して高いものではない。
 この主要観光地を観光のタイプで分けてみると、松山市は都市観光と温泉保養地の二つのタイプが重なったところである。石鎚山は西条市・小松町・面河村など山麓地域に及ぶ山岳観光地で、四国の同種の観光地として最高の魅力点をもっている。大三島は、島峡観光地で島しょ景観に大山祇神社の存在が大きくあずかっている。このほか南予鹿島や船越(西海)半島は、海岸海洋展望観光地である。
 なお、県内には四国八十八ヶ所の札所が二六寺、別格霊場が八寺を数えるが、この霊場巡拝も信仰を基礎とした広い意味での観光とみることもできるが、なかでも松山市では霊場が市内の定期観光バスに入っているように、都市型の観光地にとって重要な資源になったものもある。しかし、霊場の多くは、巡拝バスや自家用車の利用で昔のように宿坊に泊まる人びとが少なくなって、滞留型の観光地の面影がうすくなっている。

表8-3 愛媛県内の主要観光地とその評価

表8-3 愛媛県内の主要観光地とその評価