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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

1 山村の類型

 山村の区分

 山村は山地に立地し、山地固有の生業に従事する村落であると一応は定義できるが、わが国の山地にある村は多少なりとも農業を営んでいるので、山村と農村をはっきりと区別することは困難である。農林省統計調査部が昭和三七年に行った農業地域経済地帯区分では、山村は耕地率が一〇%以下、林野率が八〇%以上、林業兼業農家率が一〇%以下の旧市町村と規定している。また山村振興法では、昭和三五年のセンサスにおいて林野率が七五%以上の旧市町村を山村と規定している。後者の規定にしたがうならば、愛媛県内の山村は八四の旧町村(全市町村数の三五%)とみなすことができる。
 これらの山村のなかには、集落の立地や形態、機能などから、さまざまな山村が包含されている。それを地域的に類型区分するにあたって、一つの指標を用いるとすれば、耕地の構成からみることが最も有効であるといわれている。県内の山村を耕地の構成によって、水田率六〇%以上の水田卓越山村、水田率六〇%から四〇%の水田・畑地中間型山村、水田率四〇%以下の畑地卓越山村と分けてみると、その分布はかなりまとまってひろがっていることがわかる(図7―5)。

 畑地卓越山村と水田卓越山村

 畑地卓越山村は、銅山川流域・加茂川流域・上浮穴郡など東予から中予地域にかけての山村に広くみられ、それは地質とも関連していて北は中央構造線から、南は仏像線の間に多い。この地域は、四国山地の中軸部にあたり、地形は最も急峻である。険しい山地の間にV字形の深い河谷が走り、谷底平野の発達は良好ではない。地質は北から結晶片岩・秩父古生層が帯状に連なり、これらの風化土はきわめて地味良好である。谷底平野にとぼしいいっぽうでは山腹緩斜面の発達は良好で、地味の良好さと相まって、ここに耕地が展開している。山腹緩斜面の耕地には灌漑水を引くことは困難で、もともと畑としての利用が一般的であった。耕地が広くみられる山腹緩斜面は同時に集落の立地点にもなっているので、畑地卓越山村は集落立地からすれば、山腹緩斜面に集落が立地している山村といえる。
 一方、水田卓越山村は、中央構造線の北側の高縄山地にも見られるが、その多くは仏像線から南側の南予地域の山村に広くみられる。この地域の山容は全般的になだらかで、その間に肱川の支流の宇和川や、四万十川の上流の広見川が緩やかに流れ、谷底平野の発達が良好である。谷底平野は灌漑水の取得には便利で、耕地は水田として利用されてきた。集落は谷底平野に展開する水田に接して立地するので、水田卓越山村は集落立地からすれば谷底平野に集落の立地する山村といえる。

図7-5 愛媛県の畑地卓越山村と水田卓越山村の分布

図7-5 愛媛県の畑地卓越山村と水田卓越山村の分布