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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

1 商業の地位

 卸売業の地位

 愛媛県の卸売業の地位は、全国や四国と比べてかなり低位にある。商店数と従業者数でみると、四国全体の約三分の一の割合を占めていて、これは同じく人口の割合とほぼ対応している。しかし、年間販売額では、その割合は二六%と低く、香川県の四七%に比べて大きな相違がある。また、経営規模や経営効率からみても、一店当たり、ならびに従業員一人当たりの販売額は全国や香川県とかなりの差があって、約半分の値しかない(表6―14)。さらに従業者規模別の商店数でも、二〇人以上の商店の割合は、香川県の一一%に対して八%と低く零細な商店の多いことが目立つ。
 愛媛県の卸売業が香川県のそれに対してこのように低いのは、高松市に四国の中枢管理機能が集中していることから、四国全体を商圏とする卸売業が同市に集積していることによる。卸売業務には、物の移動をともなう場合と単なる伝票操作によるものとがある。高松市は後者の役割をもっている商社がかなりあるので、愛媛・香川両県の卸売機能は統計上に表れるほどの差異はないと考えてよい。

 小売業の地位

 愛媛県の小売業や飲食業は、商店数、従業者数、年間販売額のいずれにおいても四国で最高の値を示し、四国全体の約三分の一の割合を占めている。一般に、小売業や飲食業は卸売業に比べて商圏が狭いため、地域の人口数が商業活動の大きさを示す傾向が強い。愛媛県の小売業や飲食業が四国で最高の値を示すのはこのためであって、事実、小売業と飲食業の三分の一の割合は人口の割合とほぼ対応している。
 総量では四国最大であっても、経営規模や経営効率では、卸売業ほどの差はないが、やはり全国や香川県の水準以下である。一人当たり販売額では、香川県と七〇万円、全国と二〇〇万円ほどの差があって、一店当たり販売額でも、それぞれ約三〇〇万円、一〇〇〇万円の差がある(表6―14)。したがって、愛媛県の小売業や飲食業は、総量としては四国の三分の一を占めているといえ、それは人口が多いためであって、規模や効率ともに全国や香川県の水準以下である。


表6-14 卸・小売業からみた愛媛県の地位(昭和54年)

表6-14 卸・小売業からみた愛媛県の地位(昭和54年)