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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

2 タイ網

 タイ網の種類

 タイの種類にはマダイやキダイ・チダイ・ヘダイなどがあるが、瀬戸内海での漁獲高の約九割はマダイである。マダイの生息に好適な条件は水深五〇mから一五〇mの岩礁底質で、海水の流通が良くて冬の水温が八から一四度Cのところであり、この条件に合う水域は瀬戸内海が第一、ついで長崎県から島根県にわたる海域である。      
 タイ漁では地漕網・葛網・縛網・五智網・手繰網や釣漁などがあるが、このうち葛網・縛網・五智網についてのべてみる。
 タイ葛網漁業は摂津(大阪府)や紀伊(和歌山県)などを中心に、足利時代の終わりごろから発達した。
 タイ縛網は安芸・備後方面で始められ、まもなく伊予に伝わり明治二〇年(一八八七)までには燧灘を中心に瀬戸内海で発達した。縛網は四〇人を越す人手を必要とする大規模な網漁業であり、漁村全体で運営されたほどのものである(写真4―2)
 五智網は一種のタイ手繰網で、漁船は一隻三人乗りで八隻から一〇隻が一組となり、昼間の潮流の急な時をみはからって出漁する。各漁船は八町(約八〇〇m)間隔で並列して網をおろし、魚を追いこみとるものである。現在は人手のあまりいらない桝網を使用する場合が多い。