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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

4 溜池灌漑

 溜池灌漑
     
 溜池の発生は、河川の井堰より時代が古い。愛媛県は溜池の数が多く、その密度も高い。溜池は主として灌漑用に使用する目的で設備され貯水されるものである。
 溜池の構造は堤塘、「かけそ」、樋、除などからなっている。堤塘(池の土手)は砂、礫、土を人工的に盛りあげ固定化したものが多い。水を溜めるので、その形、長さなどによって池の形態、広狭が決定される。かけそは小さい谷や湧泉などから水を引く流水路で、その水を溜めるのである。樋は堤塘あるいは岩石に設け、停溜水を吐き出すところである。池には吐入・吐出があって、余剰水のはけ口を「除」と呼んでいる。かけそのない溜池もある。池の中に湧泉があるとか、周辺の山々の降雨を貯水する池もある。
 「伊予池帳」には、宇和島領五三〇か所、吉田領二六一か所、合わせて七九一か所の溜池が記録されている。これらの過半は藩が夫食米を出して造営したものである。また年々の修繕費も井川費と称して藩から支出されていた。
 最近の県内における溜池の数をみると、東予地域一一四五、中予地域一〇九三、南予地域九七五、計三二一三か所の溜池が集計されている(昭和五二年度)。なかでも高縄半島周辺、南予の山間諸盆地にとくに多い。溜池の分布には、降水量の多少、河川の水懸りの良否、溜池築造技術の有無などの要因が関係している。