4　各地の気候

　気候区分

　日最低気温月平均図のうち一月と八月、日最高気温月平均図のうち一月と八月、年平均気温図の五枚の分布図から各々二から三本の等温線を選びだし、各分布図を重ね合わせる。この図で等温線が混み合っているところを気温が不連続に変化している気候区界とする。気候区界線には等温線の密度が高くでている硬い境界と低い軟らかい境界がでてくる。気温分布図では宇和盆地と南予海岸、東予の海岸平野と法皇山地、久万盆地周辺などでは硬い気候区界が得られる（図2―37・38）。
　降水量についても同様な方法で気候区界図を作成する。冬の降水量を一月の月平均降水量分布図、梅雨期の降水量を六月の月平均分布図、秋雨期を九月の月平均分布図でそれぞれ代表させ、それに年平均降水量分布図の四枚から降水量に関する気候区界を設定した。さらにその他の気候要素として雪日数、結氷日数、日照時間などの分布図から気温の場合と同様な方法で気候区界を設定する。各々の気候区界図は気候環境を示す指標として重要であるばかりでなく、気候資源の開発、気象災害の防止などに利用できる。ここではより一層総合的気候区界を設定するため、各気候要素の気候区界図をさらに重ね合わせ、図2―39をえた。このような気候区分図は気候の地域性の認識に不可欠で、広く教育、地域開発、防災計画などの実用、応用目的のための重要な基礎資料となるであろう。
　次に各地の気候の概略をみてみよう。

　各地の気候

Ｉ・内陸高原山地気候区
Ia・久万盆地気候区　冬は寒冷で降水量も多く、雪日数も四〇日におよぶ。暖候期の降水は梅雨期・秋雨期とも降水量は多い。夏は冷涼、冬は寒冷で平地との気温差は四度Ｃから六度Ｃ。日照時間は年中平地より少ない。冷涼湿潤のためラングの雨量因子は最も大きい。
Ib・仁淀川上流気候区　冬はＩａよりやや温暖、谷が南に開いているので梅雨期・秋雨期の降水は多く月平均三〇〇㎜をこえる。南海気候型の降水量の季節変化をする。
Ic・石鎚山地、大野ヶ原、法皇山脈気候区　県下で最も寒冷で最寒月気温は氷点下二度Ｃから七度Ｃ、最暖月で一五度Ｃから二〇度Ｃで冷帯気戻。降水量は四季を通じて多く、年降水量は三〇〇〇㎜をこす。
Id・漸移帯　標高六〇〇ｍから一〇〇〇ｍの山腹または山麓地帯、観測地点が少ないので気候の特徴は明らかでない。降水量は山地についで多く、局地性が大きい。

Ⅱ・南予盆地気候区
Ⅱａ・大洲盆地気候区　夏高温、冬低温で盆地気候特性を示す。冬はかなりの降雪、秋から初冬に放射霧が発生し、寡照となる。
Ⅱｂ・内山・小田気候区　県内で最も内陸性気候、夏は高温、冬は低温で降雪あり。梅雨はやや少なく、秋雨期には多雨。
Ⅱｃ・野村盆地気候区　北の大洲盆地の気候に近い。大洲よりやや低温。秋に放射霧が多い。梅雨期・秋雨期とも大洲よりやや多雨。しかし冬の降雪は少ない。
Ⅱｄ・宇和盆地気候区　南予盆地のなかで最も標高が高く、やや低温、寡照。降雪は多いが秋の霧は少ない。梅雨期の降水量多く、ラング雨量因子は大きい。
Ⅱｅ・鬼北盆地気候区　南部の盆地で、西側が開けているので海洋性気候である。降雪、秋の霧ともに少ない。冬は温暖で二月の昇温が大きい。

Ⅲ・南予海岸気候区
Ⅲａ・南予海岸北部気候区　海洋性気候はせまい海岸地帯に限られる。冬はやや低温で降雪も多いが、春の訪れは早い。梅雨期の降水は多く、秋雨期はやや少ない。
Ⅲｂ・南予南部気候区　冬は最も温暖で無霜期間が長く春の訪れは早い。梅雨期の降水量が多く、秋雨期のそれを上まわる。海洋性気候は内陸まで広がる。
Ⅲｃ・岬半島気候区　最も海洋的気候で冬温暖・夏冷涼で、気温の日較差も小さい。冬に北西季節風が特につよい。また台風期にも強風が吹く（写真2―40）。

Ⅳ・中・東予海岸気候区
Ⅳａ・中予海岸気候区　海洋的気候で冬も温暖で多照。梅雨期・秋雨期ともにやや少ない降水量で、平均して寡雨。やや内陸では夏高温、冬寒冷。松山では都市気候。
Ⅳｂ・高縄山麓気候区　半島北部は海洋性気候だが、南部や東部ではやや大陸的気候で冬とくに寒冷。降水量は秋雨期に多く梅雨期に少ないが、一般に寡雨。今治周辺には都市気候。
Ⅳｃ・東予海岸気候区　冬にやや低温・夏は高温で風がよわい。秋雨期の降水量はやや多いが、梅雨期は少なく寡雨。西条・新居浜・伊予三島・川之江では都市気候。
Ⅳｄ・島しょ気候区　海洋性気候だが、冬には強風でやや寒冷。春から梅雨期にかけ霧、梅雨期・秋雨期とも寡雨だが局地性が大きい。