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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

3 その他の気候要素

 日照時間

 天気状態を表す指標として降水日数、雲量などが使われるが、ここでは日照時間をとりあげてみる。日照時間は農作物の生産性や最近注目をあびている太陽エネルギーの賦存量に直接関連する重要な気候要素である。とくに瀬戸内海地域は日照時間が多く晴天率が高いことで知られているので、この気候要素の分布を明らかにすることは意義あることである。日照時間を月別にみると、いずれの地点でも八月が最も多く、一二月または一月が最も少ない。太陽高度が最も高い六月は梅雨期に重なるため、日照率は三九%(年平均は四八%)とさがり八月の日照時間の七〇%前後に急上昇する。
 一月の平均日照時間の最も少ない久万盆地から大洲盆地にかけての地域で、月平均九〇時間前後である。この地域は県下の多雪地域と一致し、雲量が多いことが寡照の原因である。一方、瀬戸内海地域や宇和海南部では一二〇時間から一四〇時間にも達し、明るい瀬戸内海の冬を反映している。八月はやはり四国山地南部で少なく一八〇時間、南予の盆地では二〇〇時間から二二〇時間、海岸では二三〇時間から二五〇時間でやや多い。今治を除く東予海岸では二〇〇時間から二二〇時間で海岸地帯では最も少ない。
 年平均日照時間の分布では、久万一六〇〇時間、大洲一八〇〇時間と少なく、南予内陸と東予海岸は一八〇〇時間から一九〇〇時間、南予海岸で二〇〇〇時間、松山・今治は最も多く二一七〇時間となっている。月平均日照時間、大気外月平均全天日射量、月間可照時間、月の一五日の南中時太陽高度などから月平均全天日射量が計算できる。県内の全天日射量は年平均で一日当たり三・〇×10の三乗kcal/立法メートルで、月別にみると七・八月が最も多く一日当たり四・〇二×10三乗kcal/㎡から四・二×10三乗kcal/㎡、一二・一月が少なく一日当たり一・五から一・七×10三乗kcal/㎡で、夏は冬の約二・六倍も日平均日射量がある。

 ラングの雨量因子

 隆水量とならんで重要な気候要素として蒸発量があるが、蒸発量の観測は現在ほとんどなされていない・蒸発量は湿度、風、飽差、気温などによって決まり、通常気温によって蒸発量を推定する試みがなされ、ーンスウェイト、マルトンヌなどによって提案されている。ラングの雨量因子(R=P/T・Rはラング雨量因子・Pは年降水量㎜、Tは年平均気温度C)もその一つで、定積土の土壌分布、土壌の乾湿とよく対応する。
 県内のラングの雨量因子を算出すると、気温が低く降水量の多い久万盆地、石鎚山脈で大きく一七〇から一八○に達し、別子ダムでは二五八で最も高い。南予の盆地のうち宇和盆地では一三一で最も大きく他は一二〇から一三〇であるが、大洲盆地では一一二と最も小さい。南予海岸、佐田岬半島では一〇〇前後であるが、東・中予では八〇から九〇で、島しょでは七〇から八〇と最も小さい。ラングの雨量因子が九〇以下であると、灌漑施設がない場合水不足を生じ干害がおこりやすいことを示している。