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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

四 南予地域

 自然環境の特色

 南予地域は地形的条件によって、県内の他の二つの地域に比べて最も地区数が多いところとなっている。それは、大洲、八幡浜、宇和・野村、鬼北、宇和島、城辺の六地区である。地形地域の区分では肱川流域と吉野川流域のなかに、大洲・宇和・野村・鬼北の盆地群があることと、宇和海沿岸のリアス海岸による半島地形が多いことなどによっているが、このために気候区も八つに区分されている。このような自然環境は、経済的・社会的活動の局面にも影響を与えていて、面積のうえからも狭い活動地域を形成させている。

 大洲地区

 肱川流域では最も広い地区で、盆地気候のもとにあり、農業地域としては南予農山村地域に属する。商業活動では大洲市に小売業が集積するものの内山地区(内子町・中山町・五十崎町)も地区東部の中心をもっていて、人口のうえでは中南予山間地域の型である。通勤通学圏では大洲圏を認めることができるものの、消費者買物行動では松山圏にも属するところがあって、都市圏で松山との漸移地帯としてみることができる。

 八幡浜地区

 この地区は県内で最西端の地区で、佐田岬半島によって伊予灘沿岸と宇和海沿岸の両地形区があり、気候区でも南予北部海岸気候と半島・岬気候区の二つが現れる。農業地域では、南予段畑地域が現れ、漁業地域も佐田岬沿岸と宇和海沿岸の両地域をもっている。
 八幡浜市が商業活動の中心都市としてあり、通勤通学をはじめ交通流や消費者買物行動では、いずれも八幡浜圏域が認められ、同市のヒンターランド(後背地)は、地域として広くはないものの確立した地区となっている。

 宇和・野村と鬼北地区 

 この地区は、肱川上流域にある宇和盆地と野村盆地を中心とした宇和・野村地区と、四万十川の支流で吉野川の上・中流域の鬼北盆地を中心とした鬼北地区である。ともに南予地域では四国山地の西側にあって、とくに鬼北とは鬼ヶ城山の北方という地理的位置から呼ばれており、三間盆地と広見・松野盆地の二つがこのなかにある。この二つの地区は、いずれも気候区では特有の盆地気候を現している。
 経済活動のうえからは、南予地域のなかで大洲地区とともに農山村・山村農業地域に属し、盆地の中心集落である宇和・野村・近永などに商業の集積をみる。工業生産水準では南予低位工業地域に属し、農村地域導入工業の立地を幾つかみることができる。人口では、停滞と衰退の漸移型を示し、人口減少と高年齢化の進行が認められ、出稼ぎ常習地域でもある。都市勢力圏では、通勤通学で宇和副次圏が認められるほかは、すべての局面で宇和島圏に属している。

 宇和島と城辺地区

 宇和島地区は南予地域で最大の都市である宇和島市とその周辺町村をふくむ。地形的には、宇和海沿岸地域、気候区では南予南部海岸と半島・岬の二つの気候区に属している。農業地域としては南予段畑地域に属し、段畑耕作が卓越するとともに内陸は南予農山村地域となる。商業機能は宇和島市に集積し、その都市圏域は八幡浜市や大洲市などに比べて最も広い。これは宇和島市が大洲・八幡浜の両市から離れていることと、地形的にも周辺に盆地があって、それぞれが経済活動の場をつくりあげているものの、旧宇和島藩時代からの交通のつながりがあることなどによっている。
 県内で最南部にある城辺地区は、宇和島地区に入れてもいいところではあるが、いわゆる南郡(南宇和郡)の中心集落としての城辺町と御荘町が周辺の町村に対する結節機能をもち、一つの圏域を示していることから城辺地区が設定されたのである。その自然環境や農業地域、工業生産水準などでは宇和島地区と似ているが、漁業では渭南海岸地域に入る。また人口では中間型であって、人口減少や高年齢化をみせている。