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えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業Ⅸ -砥部町-(平成27年度「ふるさと愛媛学」普及推進事業)

第3章 交通網の整備と人々のくらし

 国道379号は、松山(まつやま)市を起点とし、砥部(とべ)町を経由して喜多(きた)郡内子(うちこ)町で国道56号に接続する延長約68kmの幹線道路である。昭和50年(1975年)、国道に昇格するまでは、主要地方道(県道)松山・砥部、内子線として旧広田(ひろた)村の地域の人々の生活には欠かせない道路としての役割を担っていたが、三段カーブなどの急カーブが多い上に道路幅が狭く、大型車の通行が困難であることや救急医療の充実、自然災害への対策強化等の問題を解決する必要から整備が始められた。整備事業は交通の難所であった三段カーブの解消から始まり、昭和49年(1974年)からは上尾(うえび)第二隧道(すいどう)の建設、そして第三隧道、第一隧道と順次建設された。その後もバイパス道路が整備されたり、川登(かわのぼり)、万年(まんねん)の両隧道が完成したりするなど、道路状況が改善された。
 しかし、道路の整備が進められ人々の日常生活における利便性が向上する一方で、使われなくなった道には、人々の記憶から忘れ去られようとしている「地域のたからもの」があることを私たちは忘れてはならない。
 本章では、旧広田村と松山市とを結ぶ主要地方道松山・砥部、内子線(現国道379号)のうち、上尾峠を中心とした付近の道の移り変わりと、広田村にくらした人々の移動手段の変遷について明らかにするとともに、古道を歩き、地域に残された歴史的・文化的遺産とその記憶を次世代へ残すことを目的に、聞き取り調査協力者の身近な地域の調査による「探索記」を掲載することとした。