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えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業Ⅸ -砥部町-(平成27年度「ふるさと愛媛学」普及推進事業)

1 農業と人々のくらし

(1) クリの栽培

ア 郷里で果樹栽培に取り組む

 「私(久保野知さん)の父は、自分の山林で林業をしたり、田畑で米や麦を作ったりしていました。養蚕をしていた時期もあったようですが、私にはその記憶はありません。私は、松山農科大学附属農業高等学校(現愛媛大学附属高等学校)を卒業後、父も高齢で母も少し体が弱かったので、家に帰って家業を継ぎました。そのころ、私は米や麦、大豆を作っていましたが、それだけではお金が入ってこないので、換金作物の栽培をしようと考えました。当時、広田村では葉タバコを栽培している農家が大変多く、私も葉タバコを栽培しようとも思いましたが、家族構成なども考慮して無理だと判断し、自分でクリの栽培を始めることにしました。クリの栽培をしばらく続けているうちに、クリだけでは収益が少ないので、もっと収益の上がるものを栽培しようと考えてユズの栽培も始めるようになり、現在では、ユズの栽培を主体として、クリの栽培や水田の耕作をしながら、以前からやっていた林業も行っています。今では麦を作らなくなり、今は広田地区で麦を作っている人はいないと思います。
 近年は、健康志向が強まって喫煙者が全国的に減少したこともあり、広田地区でも葉タバコを作る人はいなくなりましたが、それに代わって豆類やユズ、自然薯(じねんじょ)などの様々な作物が栽培されるようになりました(写真2-2-1参照)。」

イ クリの栽培から収穫まで

 「私(久保野知さん)は、実生(みしょう)(接ぎ木ではなく種子から発芽したもの)の苗木に、代表的な品種である『筑波(つくば)』や『銀寄(ぎんよせ)』といったものを接ぎ木して栽培しています(図表2-2-2参照)。最近では、『紫峰(しほう)』という、粒が最も大きくクリタマバチの被害にも強い品種のほか、『石鎚(いしづち)』や『岸根(がんね)』という品種も普及しています。広田や小田(おだ)(喜多〔きた〕郡内子町)で収穫されたクリは中山(なかやま)農協(現JA)へ出荷し、全国的に有名な『中山栗』として流通しており、ユズについてもクリと同様に中山農協へ出荷しています。クリの出荷時期は、品種によっても少し違いますが、大体10月の末ころまでで、ユズの出荷は11月に始まります。集荷日が決まっているので、農協に出しておけば持って行ってくれます。クリの収穫作業は、若いころから妻と二人でやっており、ほとんどの場合、熟して落ちたものを拾ってイガを剥(む)くのですが、落ちそうな状態のクリを長い竹で揺すって落とすこともありました。」

ウ クリ栽培における苦労

 「クリの栽培では、品種の良い苗木を植えて、まず下刈りをします。そして、病虫害の防除をするのですが、『クリ栽培指針』が農協から送られてくるので、それに従って行っていきます。秋になって収穫の時期を迎えると、落ちているクリを拾います。収穫までは草刈りが主な仕事になります。草は草刈機で刈っていますが、クリとユズの両方の草刈りとなると大変で、除草剤を使わなければ間に合わないときがあり、最近では、農協で使用が認められているサンフーロンという除草剤を使用しています。俗に、『桃栗3年、柿8年』と言われるように、クリは3年くらいで実がなり始めますが、5年くらい過ぎてから実をならせた方が樹木に負担をかけませんし、10年もするとたくさんの実がなるようになります(写真2-2-2参照)。私のクリ園が3反(約30a)で、息子のものと合わせると6反(約60a)になります。この辺りではイノシシによるクリの被害が大きいので、息子は電気牧柵(家畜の逃亡や害獣の侵入を阻止するために、牧場や農地などの周囲に設置される、電流の流れる金属線を張り巡らせた柵)を設置しています。日中は電気が切れて、夜になると電気が入るように設定し、イノシシが入って来ないように対策をして、週に一度、落ちているクリを拾って収穫しています。私のクリ園はユズ園の周囲にあって、電気牧柵を設置しにくい場所にあるので、収穫期には毎日クリを拾うようにしています。」

(2) ユズの栽培

ア 栽培における苦労

 「ユズの木は徒長枝(とちょうし)(まっすぐに出る枝)が発生しやすいため、それを抑えるために、誘引(枝を下方に引っ張って下げること)し、枝を曲げてやります。その際、枝が湾曲するといけないので、ハウスバンドで固定して、真っ直(す)ぐの状態にします。最初の樹形を作ることができたら、後は枝を伸ばしていきますが、誘引した枝以外にも徒長枝が発生するので、それを除いてやるのがなかなか大変です。私は、主枝を1本ではなく3本出すのを理想としていて、そうすると管理がしやすいし、収穫もしやすくなります。また、主枝の角度が45°くらいに開くようにすると、あまり樹高が高くならずに作業がしやすくなります。ユズの栽培では、苗木を植えてから、最初の樹形を作る5年間くらいが、特に大事な時期になります。冬の間に、木と木の枝の先端の間隔が1mくらいは空いているような状態にして剪定(せんてい)をします。徒長枝は6月ころから9月ころまでしょっちゅう出るので、それを除(の)けるのが大変です。ミカンと比べてユズは徒長枝が出やすく、その徒長枝には太いとげがあります。若い木であれば、とげは太くても手で除けられるくらい柔らかいので、作業も楽なのですが、とげが固くなってからだと剪定ばさみで取り除かなければならなくなり、作業が大変になります。」

イ ユズの収穫

 「ユズは全部で5反7畝(約57a)くらいの樹園で作っています(写真2-2-3参照)。収穫されたユズをキャリー(黄色い籠のようなケース)に一杯詰めると15㎏になりますが、キャリーが500個から600個にもなります。ユズを急いで収穫した後、それを選別して農協へ出さなければならず、二人ではとてもできないので、グリーンキーパー(旧広田村等の出資により設立された第三セクター方式の林業事業体)の方々を雇ったり、それ以外の方を雇ったりしています(写真2-2-4参照)。大体20人役といって、雇う人数が5人であれば4日間雇うということが多いのですが、それ以外の日も夫婦で収穫をしています。去年(平成26年〔2014年〕)は収穫が例年に比べて少なかったので、個人的に人を雇って作業を行いました。」

ウ ユズの等級

 「ユズの等級は、1級と加工AからDの5段階に分かれており、特に良いものが1級とされています。等級は、虎斑(こはん)症の数といった外観の美しさで決まり、1級となるための基準は、斑点が三つ以内までだったと思いますが、それがなかなか難しいのです。虎斑症はユズの生理的なもので、病気ではないそうですが、それが少なく病虫害のほとんどないものが1級となります。1級になると、1㎏当たり500円くらいの価格で売れますが、加工Aから等級が下がるにつれて価格も下がり、加工Dになると、1㎏当たり60円くらいになってしまいます。また、1級のユズは、料理屋で中身をくり抜いて器としても利用されるし、皮も使われます。加工Aや加工Bの皮も使われますが、加工C以下になると、ユズ酢にするくらいしか使えません。
 収穫したユズは、あらかじめ自分で等級ごとに分類しておき、決められた出荷日に、広田地区のユズを全部集めて、キャリーに入れたまま農協へ持って行けば、品質の良いものは箱詰めにして出荷してくれます。」

エ 昭和38年の豪雪の記憶

 「当時は、家から見ても、前が見えないくらいの雪が積もっていました。私(久保野知さん)の長男が生まれたころのことなのでよく憶えていますが、その年以後はあれほどの雪は降っていません。私たちは何とか村を出ることもなく農業を続けてきましたが、そのころ、降り積もった雪がなかなか解けず、村にいても何も仕事がないため、帝人(松山市)などの会社へ勤めるために村を出て行った人が多かったように思います。」


図表2-2-2 旧広田村のクリ栽培面積と収穫量

図表2-2-2 旧広田村のクリ栽培面積と収穫量


写真2-2-3 斜面に広がるユズ園

写真2-2-3 斜面に広がるユズ園