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河川流域の生活文化(平成6年度)

(3)台所から川を美しく

 **さん(喜多郡五十崎町平岡 昭和4年生まれ 65歳)
 **さん(喜多郡五十崎町平岡 昭和7年生まれ 62歳)
 五十崎町の婦人会活動のリーダーとして活躍している**さん、**さんに、日ごろ心がけている川へのいたわりを、聞いた。

 ア 川とのかかわりを振り返って

 ** 終戦直前(昭和19年)に呉から疎開。平凡なお見合いで、両親が、「この人ならまじめやから絶対大丈夫じゃ。」い
   うのと一緒になりました。四国電力に勤めていたもんですから、転勤、転勤で、子供を連れもって全部回りました。5回
   くらい転校しましたかねえ。五十崎の家は、おばあちゃんが一人がんばってくれとったんですが、夫が宇和島電力所で定
   年になりましたのでね、昭和58年にその家を建て替えて、こちらに帰り、落ち着きました。
    子供は、仁淀川あたりの川で泳いで大きくなったんですよね。高知県の佐川という所で、子供たちが川で泳いでいた時
   に皮膚がまっ赤になってね、炎症を起こした。そのころ(20年前ころ)から、実際に川で泳げなくなったんです。これ
   は、川の水が汚れてしまうなあ、大変じゃなあと、自分が思ったのはその時です。まだ、世間では、川は汚れておるなん
   ていってないころ。でも、農薬が田んぼからもろに出てきますのでねえ。これは、おおごとじゃなあとは、思いよりまし
   たけどねえ。

 ** わたしが小さいころは、両親が製糸工場へ勤めとりましたんで、今で言う共稼ぎです。近所のおばあさんに見てもらっ
   ていました。おばあさんの家の裏がすぐ川で、二つか三つの時、わたしは溺(おぼ)れて、流されて意識不明になりまし
   た。人工呼吸をしてもろて、息を吹き返したんじゃそうです。
    食糧難の時代だったので、少しでも家族の負担が減るようにと考え、松前町の東洋レーヨンに就職し、7年ほど勤めて
   こちらに戻りました。2年後に結婚した後もずっと五十崎でくらしています。

 イ 日々の地道な活動を

 ** 近所で、**さんと共通のお友達で、わたしたちがお手本にするような朗らかな方がおられたんですね。その方が、
   『婦人会入らん?』って言われたんで、今までは電力なんかは、アパートや社宅がかちっとあって、他との交流はなかっ
   たんですよね。ほいでまあ、そいじゃあ地域に帰って、おばあちゃんも世話になったことやから、わたしにできることな
   ら恩返しをしようかなあという、軽い気持ちで入ったんですよ。
    5年くらい前かな、シンポの会にも入ってるんですけど、生活雑排水が悪い悪い言われだしたんで、五十崎だけでも、
   「生活雑排水が原因で川が汚れとる。」とは言わさんぞと思ってから、特に力を入れるようになりました。
    五十崎の川そのものはきれいそうなんですけど、排水を集めて流れてくる小さい流れ口の水とかが、とても汚れている
   のに気付いたんです。
    排水をきれいにして流そうと思たら、世話ないんですよ。会合のたびに、チリ紙持っていってねえ、「油などで汚れた
   皿は、洗剤で洗う前にこれでふき取ってください。」って、呼びかけているんです。皆さん、一度ふいて洗いだしたら、
   ふかずにずっと流す気にならないといって、実行してもらってるみたいです。**さんにも、いろんな所で実行しても
   らってるんですけどね。
    ただ、再生紙のチリ紙を作るときには、やっぱり濁った水が川に流れ出る。身をひきゃ、皮が痛しという感じで、その
   兼ね合いは…、生存していくうちにどしても矛盾点が出てきてねえ。

 ** 料理教室のときも、豚肉を湯がいたら鍋がネトネトしますんで、ふき取らないけませんでしょ。そしたら、年配の方
   が、「こないだ、**さんに言うてもろたけん、わたしも、ボロ布をこんなに(手のひら大に)切ってふきよるんよ。だ
   いぶ積んどんよ。」と言うていただきました。パーマ屋さんに行ったら、「わたしも、いつもではないけんど、しよるん
   よ。」と言うていただくんです。わたしの場合は、捨てるのがもったいないので、ぼろぎれを切ってためておいて使うよ
   うにしてるんですが、話のついでに、「ちいとでも五十崎の川、きれいにせんといけんねえ。」と言って、自分で実行し
   ていることや聞いたことを、話すようにしています。実践しよる人の話はちょくちょく、聞きます。それぞれに実行して
   いただいているようで、うれしく思っております。

 ** あんまり気負ってそういうのをするとね、必ず反感を持つ人が出るんですよ。じんわりと、自分にストレスを感じない
   程度に、ここの料理教室にチリ紙を持って来といたり、(料理の先生に)『先生、協力して下さいね。』いうて、お願い
   したりする程度で。しゃかりきになってやるとねえ、入れ込んでしまうと、かえって逆効果のような気がします。
    洗剤だけは、川の水とは切り離して考えたいなあと思って、粉せっけんを。というのはアトピーの人とかが、全自動洗
   濯機になったころから、急速に増えたんですよ。
    今、婦人会で力を入れているのは、粉せっけんを使いましょう、食器の汚れは洗う前にふきましょう、合成洗剤の贈答
   品はもらわない工夫をしましょう(もらうとついつい使ってしまうので)、といったことです。
    飲み水は、伏流水をくみ上げている、ということは、結局、自分たちが汚した川の水は、自分たちの口に入るというこ
   となんですから。