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河川流域の生活文化(平成6年度)

(1)愛媛の手漉き和紙作り

   「紙漉くや 白のはじめは 水の色」 大西悦一

 愛媛県における手漉き和紙の営みは、古代から歴史の年輪を積み重ねてきた。平安時代の延喜式(えんぎしき)(律令(りつりょう)の施行細則を集大成した古代法典、延長5年〔927年〕完成(①))には、伊予国から朝廷に貢納した中男作物(ちゅうなんさくもつ)(17歳から20歳までの男子の労役によって調達されたもの)として「紙」が記されている。また、正倉院東南院文書(寛平(かんぴょう)9年〔897年〕(②))にも、伊予国から東大寺に納入された「紙二千七百二張」と記されていることから、古代の伊予国における和紙生産がうかがわれる。
 今日、愛媛県の手漉き和紙が占める位置は、生産額では福井県に次いで全国第2位、事業所数では全国第3位であり、福井県・鳥取県とともに、わが国有数の手漉き和紙の産地となっている(図表2-2-1参照)。愛媛県における手漉き和紙の生産地域は、「伊予和紙」の川之江市、「周桑和紙」の東予市、「大洲和紙」の喜多郡五十崎町と「泉貨紙」の東宇和郡野村町(野村町の泉貨紙業者は、大洲手抄和紙協同組合に属している。)の三地域である。各地域の生産額と事業所数は、川之江市、東予市、五十崎町(野村町を含む)の順である。それぞれの地域の事業所は特色のある手漉き和紙を生産し、各製品は愛媛県から伝統的特産品に指定されている(図表2-2-2参照)。
 この節では、愛媛県の手漉き和紙産地のうち、東予市国安(くにやす)・石田の周桑和紙、五十崎町の大洲和紙、野村町の泉貨紙の営みを取り上げた。

図表2-2-1 全国手漉き和紙の生産

図表2-2-1 全国手漉き和紙の生産

『工業統計表(品目編)(平成4年度)(③)』P148より作成(従業員4人以上の事業所の集計)。

図表2-2-2 愛媛県手漉き和紙の生産

図表2-2-2 愛媛県手漉き和紙の生産

愛媛県商工労働部経営指導課資料(伊予手すき和紙振興会、東予手すき和紙振興会、大洲手抄和紙協同組合提供資料)より作成。