データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

河川流域の生活文化(平成6年度)

第2節 川と伝統産業

 愛媛県の伝統的な地場産業である手漉(てす)き和紙業と蚕糸業(養蚕・製糸業)は、各河川の流域をうるおす豊かな伏流水によって育まれ、発展してきた。
 手漉き和紙づくりは、古代から日本人の生活に根を下ろし、生活文化と密着して各地で営まれてきた。「周桑和紙」は、周桑平野を流れる大明神川(だいみょうじんかわ)と中山川が潤す東予市国安・石田地区を中心に育ってきた。また、喜多郡五十崎(いかざき)町を中心とする「大洲和紙」や東宇和郡野村町に継承されてきた「泉貨紙(せんかし)」は、愛媛県第一の大河である肱川の各支流の流域に根付き、愛媛県における伝統的な地場産業となってきた。
 蚕糸業は、古代から日本の代表的な伝統産業であり、特に近代日本の基幹産業の一つとして経済発展を支えてきた。肱川流域の中心である大洲・野村地方では、豊かな清流と川がもたらす肥よくな土壌を舞台に養蚕と製糸業が一体となって発展し、「伊予生糸(いよいと)」・「野村シルク」の名声のもと、地場産業のかなめとして地域の経済と生活文化を支えてきた。
 この節では、大正時代から昭和時代にかけて、手漉き和紙と養蚕・製糸の伝統的な技を継承、発展させながら、ともすれば衰退しがちな伝統産業を足元から支え、地域とともに昭和を生き抜いてきた人々の、地道で創造的な歩みと姿を明らかにした。