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身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)

第1節 地域学から地域づくりへ

 「地域を学ぶ」、「地域で学ぶ」とは、何を学ぶことでしょう。人によって学ぶ内容はさまざまで、歴史や文化、産業、人物、自然など、多岐にわたります。しかも、学ぶ対象としての「地域」は、世界中のどこの地域でもよく、「地域」という言葉が示す範囲も大小があります。
 本書では、「地域」の言葉を「私たちが暮らしている身近な地域」という意味で用いています。ただし、その範囲は、小学校や中学校の校区であったり、市・町の行政区画であったり、東予・中予・南予といった地方の範囲であったり、県の範囲であったりと、学習する対象に応じて異なります。そして、「愛媛学」においては、愛媛県全体を学習の対象範囲としています。
 身近な地域を学習することのメリットは、学ぶ人が学習対象に親しみを感じながら、体験的に学べるということです。活字や画像だけで理解するのではなく、実際に現地に足を運び、話し合ったり観察したりして学ぶことのほうが、興味・関心を高め、より深い理解ができるのではないでしょうか。
 歴史や文化、産業、人物、自然など、身近な地域にある「たからもの」に気づき、地域の持つ“よさ”を会得することによって、確かで豊かな感動が生まれ、より深く専門的に学ぶことにつながっていきます。また、そのような「地域の“よさ”を見抜く眼」を養うことによって、地域社会全体の将来像を考える視点の幅を広げることにつながります。
 少子高齢社会が到来し、地域の過疎化が急速に進んでいます。このような社会に生きる私たちは、地域を維持し、活性化していくための方策を考えていかなければなりません。地域づくりを進めるその根底にあるのは、自分が暮らしている地域について、住民一人ひとりが誇りや自信を持つことではないでしょうか。
 一方で私たちは、国際化、グローバル化する社会の中で生きています。異文化社会との交流を促進する上で、自分の暮らしている地域文化を理解し、それに対する誇りを高め自信を深める中で鍛えられる「地域の“よさ”を見抜く眼」を持っていることが、異文化を理解したり尊重したりするためには必要です。そのような「眼」を持つことで、偏狭な立場にこだわることなく、広く日本や世界の中で、身近な地域を他の地域と比較することの大切さに気づかされ、身近な地域が持つ特性や、見過ごしがちな「地域のたからもの」を発見することにもつながっていきます。
 そして、「地域の“よさ”を見抜く眼」を持って、地域に埋もれたままになっている「たからもの」を発掘し、価値判断を加えて世の人々に知らせ、活用するための方策を考え出すことが、地域づくりにとって重要となります。
 例えば、西(せい)予(よ)市野(の)村(むら)町惣(そう)川(がわ)では、江戸時代に建てられた豪壮な旧庄屋屋敷の価値を活(い)かすための努力を重ねた結果、山村文化を体験できる交流の場として旧庄屋屋敷が活用されています。このように、地域の「たからもの」を地域づくりに活(い)かしている例は、県内にいくつもあります。
 生涯学習の観点はもとより、地域づくりの観点からも、地域を深く知り、さまざまな文化財や資料を次世代に伝えることを通して、地域に対する自信や誇り、すなわち郷土愛をはぐくんでいくことが必要です。
 県において、このような考え方を基本に、地域のすばらしい「たからもの」を記録し、昭和を生きぬいた人々のくらしを活写することを通して、「愛媛学」の普及推進に努めてきたことは、すでに述べてきたとおりです。