データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)

(3)「愛媛学」における聞き取り調査

 まず、自己紹介をして、調査協力へのお礼を述べます。次に、調査の目的や内容を簡単に説明し、聞き漏らしをなくしたり後で確認をしたりするために、録音や撮影の許可を得ます。聞き取り対象者の身振りや専門用語の漢字表記など、録音だけでは記録が十分にできない事柄は、メモをしておきます。
 それから、質問用紙に沿って質問をしていきますが、質問の順番や内容にこだわり過ぎないようにして、相手の話の腰を折らないように気をつけます。そして、会話がなるべく自然に流れ、相手が常に受け身になることがないように配慮しながら、聞き取りを行います。
 会話の中では、事前に調べた文献には載っていない、生き生きとしたエピソードがたくさん紹介され、新しい発見や感動があります。例えば、前述の「村の鍛冶屋」の調査では、事前の文献調査の段階で、河辺地区が林業の盛んな地域であるため、木の伐採に使うナタやオノなどの道具を作っていたであろうことまでは予想していましたが、昭和30年代までは材木を運ぶ馬が多くいて、それらの馬の蹄鉄(ていてつ)を作る仕事が主であったことなどは思いも寄らない話でした。
 聞き取り調査が終わると、デジタルボイスレコーダーに録音していた内容をできるだけ早く文字に起こしていきます。その後、新たな疑問やもっと詳しく聞きたい事柄を整理し、聞き取り対象者に連絡して、再度聞き取り調査を実施します。
 聞き取り調査は、地域の産業や文化を担ってきた人びとに自らの生活体験を語ってもらうことが多いため、地域社会の中で生きる人々のたくましさを知り、人間として在り方や生き方を再考する機会ともなります。もちろん、話者の個人的な思い込みや自慢話になってしまわないように配慮するとともに、資料による裏付けも行います。