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身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)

(1)テーマの設定

 テーマとは、「自分があらかじめ立てた問い」のことです。調査するということはまず、何か答えを見つけたい「問い(テーマ)」があって、その答えを見つけ出すということです。テーマは、調査や研究の報告書(レポート)の題名(タイトル)にもなる重要なものであり、自分で探し、作り出すものです。地域調査のテーマを設定するときは、普段の生活の中で疑問に思うことや調べたいことを基に、次のような点を大切にしてテーマを考えるとよいでしょう。

   ○ 地域の歴史や発展に関すること
   ○ 伝統産業や地場産業など地域の産業の変遷や特色に関すること
   ○ 人びとの生活に関すること
   ○ 地域独自の年中行事や祭礼、信仰に関すること
   ○ 地域の町並みや景観、土地利用に関すること
   ○ 地域の交通に関すること
   ○ 地域の自然や環境に関すること

 疑問に思うことや調べたいことがすぐには思い浮かばない場合は、次の方法でテーマを見つけましょう。

 ア テーマの設定方法

 (ア)高いところから地域を眺めてテーマを見つける

 学校やマンションの高層階や地域にある展望台など、高いところから自分の住んでいる地域や調査をしたい地域を眺(なが)めてみましょう。いつも目にしている景色でも、高いところから見ると今までは気がつかなかったものが見えてくるかもしれません。
 「田んぼの中にある木が生い茂った小高いところは何だろう。」「海の上に浮かんでいる大きないかだのようなものは何だろう。」「島にある大きな煙突はいったい何だろう。」など不思議に思ったり疑問に思ったりすることがあれば、そのような疑問を基にテーマを設定することができます。

 (イ)歩いてテーマを見つける方法

 普段何気なく歩いている道も、じっくり観察しながら歩くと、見落としているものがあることに気づいたり新たなものを発見したりすることができます。また、実際に歩くことで自分の住んでいる地域を見直すこともできます。
 まず、国土地理院発行の2万5千分の1の地形図を用意します。地形図は地域の大きな書店で購入することができます。すぐに購入することが難しい場合は、今回はテーマを見つけるための調査でもあるので地形図ではなく、インターネットの地図閲覧サービスを利用してもよいでしょう。
 次に、地形図を手に入れたら、どのようなコースを歩くのかを、地形図を見ながら決めて、歩く予定のコース(ルートマップ)を記入します。その際に市役所や町役場などで発行している観光マップや文化財の案内図を参考にするとよいでしょう。観光マップや文化財の案内図は、街を歩くときにも一緒に持っていると役に立ちます。 
 そして、近所を散歩するような気持ちでリラックスして歩きながら、次のような点を大切にして観察しましょう。

   ○ 神社、寺、史跡、道標など昔からある古いものや、ショッピングセ  ンター、道路、橋、新興住宅地など新しい
    ものは何があるか。
   ○ 目立つものやよく見かけるものは何かないか。
   ○ 田んぼや畑ではどのようなものを作っているか。
   ○ 工場ではどのようなものを作っているか。

 観察したことは、地形図に書き込んだり、色鉛筆などで着色したりしましょう。そうすることで例えば、「古いものがA地区にはたくさんあるが、B地区にはほとんどない。」といった様々な発見ができるはずです。気になることや不思議に思ったり疑問に思ったりしたことは必ずメモを取ります。もし、デジタルカメラを持っていれば、気になる風景やモノは、撮っておくとよいでしょう。
 歩き終わったら、書き込んだ地形図やメモ、撮った写真を「なぜ」「どうして」という視点で見直してみましょう。「なぜ、ミカン畑が多いのだろう。いつからだろう。」「どうして、ここに祠(ほこら)があるのだろう。」など、調べたくなるような疑問が見つかるはずです。

 (ウ)古い地形図と新しい地形図を比較してテーマを見つける方法

 同じ地域の古い地形図と新しい地形図を比較することで、その地域の変化の様子を知ることができます。古い地形図は、地域の大きな書店で注文するか国土地理院のホームページからでも購入が可能です。購入が難しい場合は、愛媛県立図書館に県内の「5万分の1図歴地形図」(国土地理院発行)や『日本図誌大系四国』(朝倉書店発行)があるので閲覧してください。また、各市町の図書館に、古い地形図があるかどうかを問い合わせてみるのもよいでしょう。
 新旧の地形図を比較すると、「田んぼや畑が住宅地に変わっている。」「栽培作物が変化している。」など様々な変化に気がつくはずです。
 例えば、八幡浜市保内町川之石周辺の明治37年測量の地形図と現在の地形図を比べた場合、「桑畑が柑橘(かんきつ)畑に変わっている。」や「工場がなくなり、跡地に文化施設や学校が建てられている。」「湾の埋め立てが行われている。」など、いろいろな変化を発見できます。そして、それを基に調査テーマを決定することができます。

 (エ)古い写真からテーマを見つける方法

 学校の資料室や廊下などに、学校周辺の景観を撮影した古い写真が展示されていないか探してみましょう。学校の“○○周年記念誌”などに古い写真が掲載されていれば、そこからテーマを見つけることができます。また、図書館に行けば、各市町村などが発行している“○○ふるさと写真集”や“市(町村)政○○周年記念写真集”などを閲覧できます。写真集の中に記録されている地域の昔の景観や商店街の様子、産業や人々の生活から、調べてみたいと思うことを発見できるでしょう。昔の景観を撮った写真ならば、写っている場所と同じ場所の現在の写真を撮って、どのような変化があったのかを調べることができます。
 例えば、東温(とうおん)市志津(しつ)川(かわ)の北(きた)吉(よし)井(い)小学校周辺を撮影したものを比べてみると、ため池(前川池、通称かご池)が埋め立てられ、池の周りの水田に愛媛大学医学部の建物や附属病院が建設されていることや、周辺の都市化が進んでいることがわかります。そのことを基に、「東温市志津川の都市化について」というテーマを設定することができます。

 (オ)博物館や資料館に行ってテーマを見つける方法

 博物館や資料館は、歴史や芸術、民俗、産業、自然などにかかわる様々な資料を収集し、保管や展示をしています。自分の住んでいる地域に博物館や資料館があれば、見学をされることをすすめます。博物館や資料館には、いろいろなモノが並べられていますが、昔の人たちのくらしの中で使われた道具や昔の人びとの生活の様子を想像することができる実物資料を見ることもできます。そして、展示されている道具や実物資料を見て「何に使っていたのだろうか。」とか「どのように使っていたのだろうか。」などと疑問に思ったことを調べることで、テーマが見つかることもあります。 例えば、「千貫(せんがん)切(ぎ)り」という一度に多くのサツマイモを薄く切るための道具が使われた時代の地域の産業や生活に関連するテーマを設定することが可能です。また、展示されている実物資料を、「現在はこのようなものがない。あるいは今もある。」とか「現在とは、このようなところが違う。」といった視点で見学すると、思わぬ発見があります。
 
 イ 調査テーマの決定

 (ア)調査テーマの焦点化

前項で述べた「テーマの設定方法」で見つけた疑問や発見を基にテーマを決定する際、テーマがまだまだ漠然としている場合は、テーマの焦点化、すなわち、テーマの絞り込みを行い、より具体的なものにする必要があります。
 例えば、テーマを「四国遍路について」とした場合、「四国遍路」の何に関心があり、どのように扱おうとしているのかがよくわかりません。テーマにもう少し言葉を加えて、レポートを読む人の興味・関心を一目で引き、わかり易(やす)いものにします。この段階でテーマを絞り込むのが難しいときは、ある程度調査が進んでからテーマの絞り込みをしてもかまいません。
 例として、「四国遍路について」というテーマで調査を行おうとしたものの、テーマが抽象的なので、テーマの絞り込みのために、地域にどのようなものがあるかを観察しながら歩いてみると、四国八十八箇所の札所(お寺)や大師堂、遍路道を示す道標が多くあることに気がつき、そのことを基にテーマを焦点化した場合の流れを、次に示してみます。
 
 「四国遍路について」というテーマにすれば、テーマが指し示す範囲が広すぎて、まとめきれない。
        焦点化  ↓
 「起源、遍路道、遍路びと、お接待」を思いついたが、まだ絞ろう。    
     さらに焦点化  ↓
 「遍路道」でもあいまいなので、自分の住んでいる地域の遍路道にある道標を中心に調べよう。
             ↓
      テーマ「○○地域の遍路道」
    サブテーマ-地図と写真でたどる遍路道と道標-
 
 上記の、テーマの焦点化の例では、サブテーマを設定しました。サブテーマは、テーマをより具体的に示したものです。調査方法や使用する資料名を書いたり、何について調べるのかが具体的にわかるように疑問形で書いたりします。

 (イ)テーマの明確化

 自分がなぜ、このテーマを設定するのか、何を調べたいのかなどを文章化する場合、下のような調査テーマ設定用紙(図表2-2-4)が役立ちます。ただし、紹介する調査テーマ設定用紙は一例なので、自分なりに様式を工夫してみるとよいでしょう。大切なことは、筋道を立てながらテーマを明確にすることです。
 例えば、Aさんが、学校周辺の古い地形図と新しい地形図を比較し、桑畑がミカン畑に変化したことを発見したことから、調査テーマ設定用紙を使ってテーマを明確にしたという設定で、例を提示します(図表2-2-5参照)。

 (ウ)テーマは変わる

 調査はテーマに沿って行いますが、調査が進むにつれてテーマを少し変えたほうが調査内容を明確に示すことができるという場合があります。資料の集まり方や調査の結果、最初に設定したテーマがあまりふさわしいものではなくなり、途中でテーマを修正するケースは少なくありません。テーマについては、レポートの完成時に、最後の調整をしましょう。

写真2-2-3 北吉井小学校周辺(現在)

写真2-2-3 北吉井小学校周辺(現在)

東温市志津川。平成23年1月撮影

図表2-2-4 調査テーマ設定用紙

図表2-2-4 調査テーマ設定用紙


図表2-2-5 テーマ「地域の養蚕・製紙業について」の場合

図表2-2-5 テーマ「地域の養蚕・製紙業について」の場合