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えひめ、昭和の街かど ―生活を支えたあの店、あの仕事―(平成21年度)

(1) 水族館のあゆみ②

   イ 生き物を世話する難しさ

 「水族館の開館時間は、町役場と同じで朝8時半から5時までです。開館前や閉館後にする仕事は特にありません。開館時間中、私は魚の世話をしていますが、魚屋にはしょっちゅう出かけました。その日の朝あがった生きた魚を仕入れるためです。水族館の狭い水槽で飼育していると、どうしても魚は早く死に病気にもかかります。そこで新しい魚を補給するため、魚屋さんに度々出かけたのです。行き先は本町通(ほんまちどおり)の出口にある濱屋さんや、その近辺の魚屋さんです。
 水族館の仕事で一番つらかったのは、養魚池で飼っていたハマチが全滅したことです。一週間くらいの間に50~60匹も死にました。かなり大きくなっていただけに、あれはショックでした。水槽や養魚池の水は、常にポンプで長浜沖の新鮮な海水をくみ上げて循環させていたので、水が原因ではありません。宇和島の水産試験場の人にみてもらいましたが、栄養の偏り(エサ)が原因ではないかということでした。ハマチにはエサとしてサンマやイワシを与えていました。これは魚屋で仕入れる冷凍のものです。水産試験場の指導で、栄養剤や抗生物質をエサに混ぜてやるようにしました。
 魚の種類によって与えるエサは違います。ほとんどの魚はオキアミがエサでした。オキアミは釣具屋で仕入れます。エサやりのタイミングと量は、水槽の底に沈んでいるエサの量を見て考えました。
 冬の間は閉館しますが、魚の世話はもちろん毎日していました。掃除のおばさんはともかく、チケット売り場のおばさんは、冬の間は来ません。
 水槽の掃除は週に一度くらいで、最低でも月に2回はする必要があります。水槽の下に敷いている砂も洗わないといけません。水槽の数は30くらいあり、1人で掃除するとけっこう大変なので、高校生のアルバイトを雇いました。ある程度要領を教えると、全部やってくれました。
 一番忙しいのは夏休みで、お客さんは、多いときで1日300人くらいだったでしょうか。私が勤めていたころにはすでに自家用車が普及していたのですが、水族館には駐車場がないため、近辺の道路端に適当に止めていたように思います。水族館は4月から11月までの間は無休でした。その間、私は適当に交替して休みを取りました。
 敷地内には動物小屋もありました。入場門を入って正面に水族館本館があり、右手にあった動物小屋にはサルがいました。私は特に世話をした記憶はありません。おばさんたちやお客さんがエサをやったりしていたようです。門を入って左手の動物小屋には池があり、私の前にいた職員がアヒルを飼っていました。私が子どものころにはここにクジャクがいたように思います。職員の事務所は入場門の建物にありました。ここの2階は物置でした(写真2-2-5、図表2-2-2参照)。
 水族館の仕事で一番気を使ったのはポンプです。ポンプが止まったら水槽に供給する新鮮な海水が止まり、水槽の中が酸欠になるため、魚が全て死んでしまうのです。したがってポンプのスイッチは昼も夜も毎日入れっぱなしで、故障したときは専門家にすぐに修理してもらう必要がありました。水族館の切符売りをしていたおばさんが水族館のすぐ裏に住んでおり、ポンプが止まると夜中でも連絡してくれました。水族館のポンプ室は、動いているときは音がしているので、止まるとすぐわかるのです。ハマチが大量死した後に、養魚池や各水槽にエアーを送る装置も取り付けました。
 病気で死ぬ魚は少なく、ほとんど寿命が来て死にますが、種類により寿命の長短はありました。エビはすぐ死にました。エビはイセエビやクルマエビなどがいました。サメやエイは建物の外にある飼育プール(養魚池)にいました。ここではタイやヒラメなどの比較的大きな魚を飼っていました。館内の小さな水槽で飼っていたのは、オコゼ、アナゴ、タコなどです。アンコウやカブトガニは私が勤めている時はいませんでした。長浜水族館の魚は海水魚だけで、ほとんどが伊予灘近海でとれるものです。イセエビも近海で獲れた物でした。
 パートで来ていた2人のおばさんは長いこと勤めていたので、いろいろ館内のことはよく知っていましたが、魚のことは知りません。掃除のおばさんは、掃除が終われば仕事は終わりで、入場券売り場のおばさんは一日そこに座っています。町の職員は3年くらいで異動するので、水族館のことを何でも知っている古株はいないのです。魚が好きで水族館勤務を希望したというのではなく、役場の人事異動で水族館勤務になっただけなので、新任の者は魚のことについて勉強する必要がありました。生き物が相手なので、引継ぎは重要でした。」


図表2-2-2 水族館平面図

図表2-2-2 水族館平面図

町立長浜水族館『水族館のけんがく』から作成