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わがふるさとと愛媛学Ⅶ ~平成11年度 愛媛学セミナー集録~

◇理想の農村を目指して

 「地域づくりは人づくりだ。」とよく言われます。この場合、人づくりということをどのようにとらえるかということですが、わたしは、その地域に住んでいる一人一人がどれだけ輝いているか、生き生きと生活しているかだと思います。人が輝いていれば、地域も自然と輝いてくるのではないでしょうか。石畳地区のような山間部での生活は不便だと思っている人は多いだろうと思います。確かに、経済環境や交通環境は十分だとは言えないかもしれません。しかし一番大切なものは、人間環境だと思います。良い人の周りには良い人が集まって来ると考えています。
 かつての石畳地区においては、一軒一軒の農家が自分のところの後継者をどう育てるかということだけを考えていたと思います。しかし今では、地区の後継者を育てようという考え方になってきています。わたしは、石畳を思う会の会員には、自分さえ良かったらいいという考え方を捨てようと言っています。みんなが助け合って地域を守り、住み良い石畳をつくろうと呼び掛けています。最近は、自分さえ良かったらいい、自分の子供さえ良かったらいいという考え方が多いのではないでしょうか。しかし、そういう考え方では、子供たちは良くはならないと思います。子供たちは、良い環境の中で育つのが最も望ましく、そして、子供たちには子供たち同士の社会があると思います。その良い環境を作ることが、一番大切ではないかと思います。
 先ほどもお話ししましたように、石畳を思う会では押し付けや強制は行いません。会の活動には、都合のつく時間に参加してもらうだけでいいのです。「自分は出ているのに、あの人は参加していない。」などという意識を会員が持たないようにしています。活動が始まる時刻に遅れた人には、どうして遅れたかなどと聞かないようにしています。また、遅れた理由を言ってきても、聞かないふりをしています。それは、石畳を思う会では、会員同士がお互いに分かり合える仲間づくりを目指しているからです。会には、規約はありません。そして、話し合いを多数決で決めることもしていません。以前、ある提案が出た時に、やはり多数決によってつぶれたことがありました。わたしは個人の小さなアイデアでも大切にしていくことによって、将来に大きな成果を得ることがあると考えています。だから失敗を恐れず、まず実行してみることを勧めています。そうした活動が継続されることで、自然と協力者が増え、みんなが助け合ってさらに大きな輪となっていくと思っています。
 石畳にも、ぜひお越しいただければと思います。ゲンジボタルは5月末ころ、ヘイケボタルは7月中旬ころに乱舞しております。そして、11月3日には水車まつりを開催します。皆様のお越しを心よりお待ちしています。御清聴ありがとうございました。