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わがふるさとと愛媛学Ⅶ ~平成11年度 愛媛学セミナー集録~

◇化学的手法の製塩への関心

 昭和46年(1971年)4月、全国の塩田を廃止して「イオン交換樹脂膜製塩」に全面的に転換させるため、「塩業近代化臨時措置法」が成立しました。これが、自然塩・塩田製塩普及活動の発端なのですが、この法成立の2年前にこうした動きを知ったわたしは、次に挙げるような点に関心を持ちました。
 その第一は、イオン交換樹脂膜製法で塩を作るのは、世界中で日本が初めてであること。したがって、未経験の製法のため、果たしてうまく塩が作られるのかという点です。
 第二には、塩の主成分は塩化ナトリウムですが、塩を過剰に精製して塩化ナトリウム100%にする、つまり他には何も混ざっていないという精製の仕方についてです。塩田で作られてきた塩がそうであったように、塩には塩化ナトリウムだけでなくて、塩化マグネシウムや塩化カルシウム、塩化カリウムなどいろいろなものが少しずつ含まれているほうがいいのではないでしょうか。つまり、それまでの塩田製塩では、海水中に含まれていた成分を有効に利用していたのですが、イオン交換樹脂膜製法ではそれが利用できません。それらを捨てるということはしないほうがいいのではないかということです。さらには、適切な成分と適度な量の「にがり」を含んだ塩は、食べ物のうま味を引き出す作用があったのですが、塩化ナトリウムだけの塩ではそうした効果が期待できないのではないかということも考えられます。
 第三には、塩は代替のない品物で、しかも必ず取らなければならない基本食物であります。確かに、塩は調味料ではありますけれど、決してそれだけではない。人間がどうしても取らなければならない食物として大切なものです。したがって、その質の良し悪しは、人々の健康に大きな影響を与えるのではないかという点です。
 さらに第四には、塩は専売でありますから、当時は専売公社が出している塩しか食べることはできません。したがって、塩田で作られた塩の方を食べたいと思っても、それがかなえられないという点です。