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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇染めと織り

 簡単に、草木染について説明したいと思います。
 草木染の工程は、基本的に植物の花、茎、葉、樹皮、根などを煮だして液をとり、その液に染めたい布や糸を入れて、また煮るのです。この時に媒染(ばいせん)といって、例えばアルミニウムとか鉄とか銅とか、水溶性の金属塩を使って染料の色素を発色させ、繊維に固着させます。それによって洗っても色が落ちなくなるのです。
 素材の性質によって、染まる色具合や染まりやすさが違いますし、染める時の温度によってもだいぶ変わってきます。一番染まりにくいのが木綿で、染まりにくいということから、藍染(あいぞめ)が発達したのだと思います。ウールは染めやすいほうですけれども、温度変化でフェルト状になってしまうので、けっこう気をつかいます。絹は、一番色がきれいに出るので、染めの中では面白いのですが、70℃以上の高温で煮るとつやがなくなってしまいますので、煮すぎに注意しないといけません。麻は、染め方はだいたい木綿と同じですけれども、木綿よりは染まりやすいのです。染料を煮ださないで、特殊な染め方をするものには、紅花とか藍があります。
 草木染というと、草の色だから緑を想像すると思うのですが、ほとんどは黄色系かモスグリーン系で、緑を出すのはかえって難しいのです。その他の色は、植物とか、媒染を選ぶことによって出すことができます。例えば、アカネとかビワの樹皮を削って乾かして煎(せん)じますと、オレンジ色が出ます。紅茶とかヤマハギ、クリの皮などで茶色が出ます。ピンク系は、9月のサクラの葉で染まるといわれていますが、時期や取る場所によっても違いまして、たいへん難しいので、普通は南米のコチニールというカイガラムシを使います。このコチニールは、見たところ本当にカイガラみたいなのですが、食紅などにも使われています。また、マレーシアのスオウという木の乾材を使っても、ピンク系の色が出ます。
 同じ植物を使っても、それを取った時期とか量によって、色見が全然違います。面白いことには、染める人の性格もよく出るようで、染めの面白さ、色をつくりだす喜びは、手間暇をかけた苦労を忘れさせてくれます。
 身近なもので染まりやすいのが、今だったら(8月下旬)マリーゴールドですね。あれはもう次々咲き続けるので、花が終わりそうになったら摘んで乾かして保存しておきます。割と少ない量で、すごくあざやかな黄色に染まります。また、セイタカアワダチソウ、これは普通は嫌われている草ですけれども、染めの材料としてはすごくいい材料です。セイタカアワダチソウの場合も、茎から葉っぱから花から、全部入れて煮ます。アケビ、タマネギの皮、シュンギク、ヒメジョオン、ヤマハギ、コーヒー、フキの緑葉などいろいろあります。
 次に、織りの工程についてお話します。糸に自分の色が染めあがった後、織りに入りますが、まず織る物の大きさを決め、タテ糸の長さ、本数を決めます。次に整経(せいけい)という工程で、タテ糸を整えるのですが、これを正確にきれいにしないと、あとの織りで苦労することになります。それから整経した糸を機(はた)にかけます。この糸のかけ方は、最初に整経で整えたタテ糸を千切(ちき)りに巻いて、そこから間丁(けんちょう)を通して、綜絖(そうこう)(細かい針に穴が開いたものがたくさんぶら下がっている)に一つ一つ通して、今度、筬(おさ)という櫛(くし)みたいなところに通して、そして最後に千巻(ちま)きに巻きます。この作業が一番目も疲れるし、織る作業よりもずっと大変な作業だと思います。糸が1本でも抜けてしまうと、織った布に筋が入ってしまうので、なかなか集中のいる作業なのです。