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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇漆器について

 漆器の話の前に漆器に使う漆(うるし)についてお話します。この漆には、現代の科学をもってしても究明されていないことが二つあります。一つは、漆というのは、木の樹液を精製した植物性のものなのですが、絶対腐らないということです。それと、もう一つは、樹液は液体ですが、それが1年中の時期で一番よく乾く時期は梅雨なのです。要するに湿度がないと乾かないということなのです。
 漆はかぶれるということも特徴だと思います。日ごろ漆を扱っている私たちでも漆がついて放っておけばかぶれますが、1回、2回とかぶれるごとに免疫性ができてきて、漆のついた所だけが、何日かすればかゆくなり、また知らない間に治っております。
 また、漆器というのは、取り扱いが非常に難しいと一般的に思われているのではないでしょうか。私は、店に来られたお客さんに漆器の説明をする時に、「漆というものは、乾いて手で触れるような状態になってからも半年から1年は乾き続けます。要するに変化をしているのです。正確に言えば凝固し続けるということのほうが正解かも分かりませんが、乾き続けているのです。」ということを言います。我々の業界では、「漆は生きている」という言葉を使っております。それの一番いい例は、家庭にある漆器のお吸い物椀を見ていただいて、中が変色している物があるとしたら、これは買ってから使うのが早過ぎて、まだ乾き続けている時に使ったということなのです。漆というのは時間がたてばたつほど強くなるのですから、漆器は古いものから出して使っていただきたいのです。特に、熱いものを入れる器は古いものを出して使っていただき、新しく買い求めたものはしばらく寝させていただく、これが漆器を丈夫で長く使う秘訣(ひけつ)だと思います。
 漆器の手入れについては、毎日使ったり、あるいは、1週間に1回か、最低月に1回でも使っていただくのであれば、本当に焼物と同じ感覚で使っていただいて、手入れは簡単でいいと思いますが、今日使えば、あと何年先に使うやら分からないというように、たまにしか使わないものは、ぬるま湯で洗って、柔らかい布で何度もふいて、しまっておいたほうが間違いないと思います。