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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇水路工事から川づくりへ

 このように、川の様子を少し気をつけて見ていると、いろんなことが分かってきます。今までの河川工事は、無責任な人間たちの流した汚い水を、人間以外の生き物のことは一切考えることなく、ただ上流から下流へ、自分たちの住んでいる所ではない所へより早く流すだけの、単純な水路となっていただけなのです。それは、まったく人間中心の、治水や利水だけを考えた、水路づくりだと思います。そして、そのことは、「とても大切なもの」もいっしょに洗い流そうとしていたと思います。その「とても大切なもの」とは、元からあった地域の自然を大切にし、地域を育んできた文化や心をしっかりと受け継ぎ、永く子や孫たちにそれを残していこうと思う純粋な気持ちではないでしょうか。人間は自然の一部であって、自然を支配しているのではないと思います。
 ところで、最近、水質汚染や大気汚染などが、地球規模で問題になっていますが、個人としてはどのように対処していけばいいのでしょうか。それは、自分だけはとか、家族だけは人に迷惑をかけていないから、というような個人主義を少し改めてもらって、ちょっと無理をして、地域社会の行事等に参加していくことだと思います。中でも、川は草花や虫・鳥・魚など多くの生き物との出会いを与えてくれる自然の基盤ですので、例えば、水生生物の調査など、親も子供も一緒に参加して、少しでも自然とのふれあいの中で、新しい発見や興味などが持てるようになるといった小さな積み重ねが大切な気がします。
 最後になりましたが、川づくりのスペシャリストの方がしきりにいわれている言葉に「川づくりとは、そこにすむすべての生き物が元気でなければいけない。」というのがありますが、私もその考え方と同じように、五十崎の町も、子供からお年寄りまで、全ての人たちが元気で楽しくくらすことができるような町でありたいと思っています。
 以上で終わります。ありがとうございました。