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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇小田川と和紙づくり

 次に小田川と和紙づくりのかかわり合いを一つ申し上げますと、紙を生産します際に、いろんな工程で水を使いますので、使った水は汚れています。その汚した水を、高度成長期の一時期ですが、そのまま小田川に放流をしていた時期がありました。
 また、戦前におきましては、手すき和紙をつくった後の排水は、ほとんどが原料(コウゾ)のカスですから、農作物の肥料になると考えられていたとも私は聞いております。
 ところが、20年くらい前から、環境問題が盛んにいわれるようになりまして、汚した水はきれいに元通りにしてから川に放流しなさいというふうなことになりまして、現在では全ての製紙工場で、水は基本的にきれいにしまして、ほとんど自然の水と同じ状態で川に放流しているというのが実情です。
 ですから、できることならば、子供たちにも、もっと川に親しんで遊んでいただきたいと思っております。しかし、残念なことに、昔と違って、最近は子供が川に親しんで遊ぼうとすると、親からは「危ない、おぼれるかもしれない。」といって子供を川に近づけないようにするなど、川はきれいになったのだけれども、逆にそこへ行って親しむ人が減ってしまいました。つまり、昔は川が危険だったけれども皆親しんでいましたが、今は危険じゃなくなったけれども、割合親しまないというふうなことではないかと残念に思っています。
 私ども手すき和紙業界というのは、雇用とか経済とか、そういった側面において地元に大きく貢献をするということは、難しいかもしれません。けれども、やはり和紙というのは、日本の文化でありますので、今後ともできるだけ長い間、地元を流れているこの小田川を利用して、やっていきたいというふうに思っております。