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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇環境家計簿と川のISO

守谷
 森下先生は、川の健康度のチェックについてお話されましたが、私は環境家計簿というものと川のISOという二つの観点から、川にアプローチしてみたいと思います。
 まず、環境というのは我々が包み込まれ生命を維持している全てのもののことで、非常に大きなものであり多種多様です。その環境のどのあたりが今大事なのかと言うと、やはり水と土と空気です。どうやら、その三つが少し傷んできている、あるいは大変傷んでいる所もあるようですが、そのあたりを、個人ができる範囲でチェックをしていくというのが環境家計簿という考えです。今は、空気が汚れているかどうかは二酸化炭素の割合でチェックできるようになっています。水の汚染については、中学生の化学の実験レベルでできると思います。まだ、土の汚染についても、土壌汚染環境基準も設置されるようになりました。この三つを、環境の家計簿ということでアプローチするのも、一つの手段であり、地域に役に立つと考えています。
 もう一つはISOということです。聞きなれないかも分かりませんが、これはInternational Organization for Standardizationの略称で国際標準化機構という所で取り決める規格です。この国際標準化機構は、国際的な単位や用語などの標準化を推進している機構で、そこで取り決められた規格にはISOいくらなどと使われるのです。例えば、現在写真のフィルムにISO400 とか、ISO100 とか書いてありますが、これは昔はASAと書いていたフィルムの感度のことです。世界中どこへ行っても、そのフィルムが使えなかったらダメですので、世界で共通にやろうというのが、このISOという考えです。
 環境の面でも、世界で標準的に何かをやるための工夫について、それぞれの地域の意味合いを含めながら、世界の人々と共通の基準をつくろうということで、環境のISOというのがちゃんとできております。環境というのは、住民の方々にも、行政にも、あらゆる人に関係ありますので、だれにでも共通に理解できることが大切です。また、ディスクロジャーということを最近よく聞かれるかも分かりませんが、情報を開示することも大切です。私は、この二つが大きな意味を持っていると考えております。
 これを小田川にあてはめてみますと、小田川を守るためには、まず、小田川は今、どういう状態になっているのかを知ることが必要です。それが分かれば、次にどう計画し、どういう行動をとればいいのかということです。さらに、行動した後には、それをチェックして、また、新たに計画して行動してチェックをしていく必要があります。これが環境のISOというやり方で、期待されているシステムです。これは川にも当てはまるのではないかと思います。今後、環境家計簿や環境のISOというシステムを大いに住民サイドや行政サイドで利用することが大切だと思います。
 話は変わりますが、私は森下先生の書かれた本を読ませていただいて、次のようなことを教えられました。それは、森と海は川でつながっていますが、もう一つ、水には地下水という、我々の目に見えない、大地の底の深い流れがあるということです。そして、この地下水は1年で1mとか1cmぐらいしか移動しないものもあり、深さ1,000mを越えるような深い井戸でしたら、そのわき水がひょっとすると、平安時代に降った雨かも分からないというような壮大な地球の営みがあり、川そのものがものすごく大きな生命体であるということなのです。