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わがふるさとと愛媛学Ⅲ ~平成 7年度 愛媛学セミナー集録~

◇文楽を伝承するうえでの問題点

 先ほど御紹介申し上げましたように、愛媛県では五つの保存団体がございます。松山市の伊予源之丞(いよげんのじょう)、それから喜多郡肱川町の大谷文楽(おおたにぶんらく)、西宇和郡三瓶町の朝日文楽(あさひぶんらく)、北宇和郡広見町の鬼北文楽(きほくぶんらく)、そして私たちの俵津文楽がそれになるわけです。人形芝居というのは、浄瑠璃と、三味線と、人形遣い、この三業が一体になってこそ、初めて一つの芸術文化、舞台芸術になるわけでございます、残念なことに、愛媛県には、三味線を弾く方が今一人しかおりません。松山の豊沢燕十郎さんだけでございます。正規の公演ができない、これが一つの大きな悩みと課題になっております。
 以前は、県内で十数名三味線を弾く方がおられました。その時は安心していたわけですが、このような状態になりますと、どうしてあの時に後継者を私たちで気を付けて養成しておかなかったかと、今、悔やまれてなりません。このままでいきますと、愛媛県の人形芝居というのは、自然に消滅してしまうのではないかと心配しております。
 三味線弾きの養成も、一つの保存団体ではどうしても限界がございます。三味線を弾く方の生活の保障も必要でございますので、なかなか良い方法が見つかりません。
 九州熊本県の清和村というところは、文楽を一つの村おこしの目玉にしようということで、淡路島の方へ三味線と、人形遣いと、浄瑠璃語りを地方公務員として派遣して2年間の研修を積ませているということでございます。
 また、人形芝居発祥の地、淡路島では、観光会館で淡路人形座が毎日公演をしておりますが、あれもすべて、語り手も、遣い手も、三味線も地方公務員として、月給をいただきながら、伝承活動を続けているということでございます。さあ、愛媛県の文楽は困ったものだなあ、あと何年続けることができるだろうか。せっかくそろっている私たちの貴重な財産を、このまま無にしてしまうのかという寂しさと自責の念にかられている状態です。
 なんとか愛媛県でも浄瑠璃の三味線を弾ける人の養成ができないものか、もちろんいろんな関係の機関にはお願いをしたわけなんですけれども、当事者の努力不足を今痛切に感じています。
 私たちとしては、県や地方公共団体の理解と協力を仰ぐとともに、地域の人に見てもらい、理解してもらう努力を続けることにより、伝承芸能を後世に残すために、あるいはまた、村おこしの一助にするために、今からもなお一層頑張って活動を続けていかなければならないと考えております。大変失礼をいたしました。