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わがふるさとと愛媛学Ⅲ ~平成 7年度 愛媛学セミナー集録~

◇今後の課題

 以上、真珠養殖の始まりから現状までの概略をお話してまいりましたが、この真珠養殖が抱えている非常に大きな問題について、簡単に申し上げることにいたします。
 宇和島の真珠は、毎年12月から2月にかけて宇和島で入札会を開き、東京、伊勢、神戸の真珠加工業者さんに売られておりますが、愛媛で取れた真珠が、全部向こうで加工されて、付加価値を高めて売られるということではいけないと思います。そこで、愛媛県、宇和島市など行政の支援のもと、宇和島市内にも、何年か前に加工組合ができました。やはり、愛媛で取れたものは、愛媛で処理して付加価値をつけて、愛媛のブランドで売るというのは、非常に大事なことなので、今後この組合が発展してもらうように、私たち養殖業者も望んでおります。
 また、先ほど、現在の養殖業者数を610と申し上げましたが、「もうかれば、多く作る。」ということが繰り返されております。母貝でも真珠でも同じですが、海を使いすぎています。数が多くなれば、海底が汚れる。この何十年間の繰り返しですから、やはりこの際、数を減らさないといけないと、私は思います。
 なぜ減らさないといけないかと言いますと、その背景には「中国真珠の脅威」もあります。中国は人件費の非常に安い国ですし、原価も安く上がりますから、近年、真珠養殖がどんどん発展しております。
 中国真珠は、生産コストが安くて、しかも売れ筋にあたる「5㎜、6㎜」に力をいれております。ですから、日本で今「5㎜、6㎜」を作りましても、中国真珠の影響を受けまして、採算が合わなくなってきております。母貝代や人件費を考えますと、どうしても「7㎜から7㎜半、あるいは8㎜、9㎜」というような、大きな物を作らないと、やっていけなくなると思います。サイズを上げる、大きな玉を作るには、お金がたくさんかかりますし、技術もたくさん要ります。いずれは中国もそういう大きいのもやるでしょうから、技術が高くなければだめです。それから、核を入れた貝の浜揚げまでの期間の管理も重要です。大きくなればなるほど表面積が大きい、つまり、玉に巻くための真珠量がたくさん要りますから、やはり相当手を入れないと巻きあがりません。
 そうすると、今の数を維持したままではできないと思いますので、やはり2、3割は減らさないと、そこまで手が回りません。密殖を続けていますと、貝殻ばかり大きくなって、だんだん母貝の体質が弱くなってきます。もし、今の数のままでサイズを上げた場合には、貝が死ぬか、傷ができるか、薄い玉しかできないか、ということになると思います。
 養殖をやっている人たちは、生産力のある海、豊かな海を子孫に残してあげないといけないのですから、ちょっと考え方を変えて1日も早く数を減らし、その代わり値打ちのある玉、高品質の物を作るという形にすれば、そのほうが、数を減らしてもかえって利益は上がります。そのところを気づいてもらうといいのですが、貝が死ぬから余計数を増すという形で同じことを年々繰り返し、ただ数だけたくさん作っているというのが現状です。これではいけないと思っております。これは私の真珠養殖の考え方です。