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わがふるさとと愛媛学Ⅲ ~平成 7年度 愛媛学セミナー集録~

◇宇和島かまぼこの特徴

 宇和島のかまぼこが、なぜうまいか。言い替えれば、宇和島かまぼこの特徴でございます。
 かまぼこの製法はいろいろありまして、全国各地で少しずつ違うわけですが、なんと言っても大きな違いは、原料の魚の種類が違う。かまぼこの原料には、エソ、グチ、コチ、ハゼ、今ではスケソウダラというのがありますが、科学的に分析した結果、エソには、旨味(うまみ)の成分が最も多く含まれております。中でも、宇和島の地元の新鮮なエソには、特に旨味が多く含まれている。
 味には、甘い、辛い、苦い、渋い、酸っぱいとか、いろいろあるらしいんですが、ごく最近は、それに「旨味」というのが加わっております。学者の中で、旨味という表現になったわけで、外国では、旨味という感覚がなかなかうまくわからないので、そのまま英語でも「umami」というこの言葉が使われているそうでございます。
 旨味というのはどんなものかと簡単に言いますと、「上品な出し汁」と思ってもらったら間違いございません。
 エソには旨味が最も多く含まれておりますが、非常に厄介なことには、水揚げされてすぐにサッと氷をうって、それから2日ないし限界の3日以内にかまぼこにしてしまわないと、その旨味も全部飛んでしまうし、弾力もつかないわけです。それでいきおい、新鮮な物を使っていくと、おいしい旨味が残ったままでいける。
 グチとかその他の魚には、旨味はなくて、煮ても焼いてもおいしい魚ではございません。ただ、極端な言い方をしますと、うまく冷蔵庫で保管すれば、水揚げされてから1か月ぐらいは、まだ弾力はできるわけです。
 したがって、グチなどは、ずっと日持ちもするし弾力もよいのですが、うまくないために、原価を比べるとエソのほうが3、4倍高いという違いになるわけです。
 グチのような原料を使う場合は、いきおい旨味がありませんので、みりんや砂糖などで味をつけます。この代表的なものが、小田原(神奈川県)のかまぼこなのですが、幸か不幸か、小田原の隣の静岡のワサビが、甘いかまぼこにはちょうどよく合うというので、関東では、かまぼこのことを「板ワサ」とも言っております。
 「良いかまぼこ」とはどんなものかというのは、言葉で表しても、実際に皆様にはわかりにくいかもしれませんが、「見た目にツヤがあり、口に持って行った時に生臭さがない。そして、先ほど言ったような旨味を、舌の中で、嚙(か)まずになめているだけでも、感じる。」というようなのがいいです。
 さらに、「適当な弾力、しまり。唾(だ)液によく馴染(なじ)むこと。」と言うと、ちょっとわかりにくいかと思いますが、あのグリグリッとした平均的に快い歯ざわりで、グリグリ嚙んでいるうちに、口の中にカスが残らずに、いつの間にか自然にのどに通っているということなんです。だから、嚙む作業と、ゴクッと飲み込む作業が、二つ別々ではうまさを感じないわけです。
 ここでぜひ申し上げておきたいのは、「値段の高いかまぼこは固い。固いのは嫌だ。」ということを、よく耳にするわけでございますが、私の判断基準から言いますと、弾力や歯ざわりの好みには個人差はありますが、おそらく唾液に馴染まないのではなかろうかということです。そう感じるのは、本当においしいかまぼことはいえません。適当な固さで、嚙んでいるうちに、自然にのどへ気がついたら入っているというのが、本当にうまいかまぼこです。
 だから言い換えれば、値段が高いから良いかまぼことは限りませんし、逆に、安くても悪いかまぼことは限らないのです。
 かまぼこの値段について申しますと、宇和島の代表名産の330円というのは、先ほど言った最高の新しいエソだけで作ったもので、200円、150円というものは、原価の安いグチ、スケソウダラなどを混ぜております。 100円くらいの安いものは、原料にでんぷんを入れて増量しております。
 私どもの宇和島市蒲鉾協同組合では、全国(関東、関西、四国)の消費者800人を対象にしたアンケートを、10年前に続いて昨年(平成6年)も実施しました。その中で、消費者の皆さんは、高級なものはそのまま食べるし、ちょっと安いものは、寿司の具とかおでんとかいうふうに、うまく使い分けていることがわかりました。