データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛学のすすめ

おわりに

 地域学をつくりだしてゆくことは、意義あることではあるが、他方、多くの困難もある。試行錯誤を恐れず、まず踏み出してみるべきではないだろうか。
 「山形学」の場合、比較的少人数(4名)の創造企画会議を設け、自由な雰囲気で地域学づくりを考えた。このとき、県は行政の立場からの制約的な発言を一切さしはさまなかった。したがって、純粋に研究者の立場で、「山形学」を構想することができたことは、なにより幸いなことであった。
 そして講座の実施にあたっては、講師、受講者、生涯学習センターの担当者の三者とも、熱心にこの新しい試みに取り組んだ結果、前述のような問題点は抱えているものの、おおむね順調に第1段階を終わったといえよう。
 いまや「山形学」は第2段階に入ろうとしており、もっと多くの研究者や、受講者を核とした県民の、企画や運営への参加や、組織化を期している。
 「地域学」は、普遍性をもつ科学であるとともに、地域の個別性、独自性を追及する科学でもある。そしてその地域学の普及啓蒙は、地域にすむ、あるいは地域出身の、人々にとって、アイデンティティを確立するための依りどころを与える役割を持つとともに、地域づくりのための基礎を与え、契機をつくり、手法をも示唆するものとなることが期待される、運動としての側面を持つのである。
 「山形学」と「愛媛学」とは、同じような条件のもとに生まれ、それでいて全く対照的な北と南の地域を対象とする「地域学」である。近い将来、両地域学の交流シンポジウムが開ければ、きっと互いに大きな成果が得られるに違いない…などと、実り多い未来像を夢みている。
 限りない可能性を秘めた地域学。「愛媛学」のスタートを心から祝福申し上げるとともに、今後、大いに研究の交流を行って、地域学の発展にともに手を携えていきたいと願ってやまない。