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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

(1)木を伐採し、材を造る

 「山に植えられた木が商品になるまでには、地味のよく肥えた林地でも、最低30~40年かかるものです。しかもその間に、風水害や雪害に何回かは見舞われます。育林が細心の注意と絶えざる世話を必要とすることは育児と同じことなのです。そして育った木は、伐採・乾燥・造材・搬出等の作業を経てはじめて商品となるのです。険しい山中で、鋭利な刃物を使っての、高い木・大きな材木相手の仕事はきつく、また危険でもあるのです。
 以前はマツは7月、スギ・ヒノキは秋の彼岸から翌年の2月までが伐(き)り時とされていました。道路事情が悪く、木材の運搬に多大の労力と時間を要していたころは、山から製材所まで数か月以上かかっていたのです。その間に、虫がついたり、菌が入ったりするとせっかくの木材が用をなさなくなってしまいます。そのために伐り時が重視されてきたのです。しかし道路が整備されるに従って、運搬時間が短縮され、伐り時にこだわる必要が少なくなってきたのです。
 大きいマツの木を伐るとき一番気をつけないといけないのは、ヒワレ(ひびや割れ目がはいること)です。ヒワレを起こさないように、倒す方向を決めないといけません。傾斜がひどく急なところでは真横へ、緩くなるに従って斜め下、下へと倒してヒワレが入るのを防ぎます。平地の場合は枝のついている方向へ、また抜き伐りするときは、他の木をいためないように空いている方向へ倒さねばなりません。スギ、ヒノキの伐採については、傾斜に対し上向きに倒してゆきます。それぞれの倒し方は、現在も変わっておりません。
 倒す方向が決まると、その方向からマサカリ(斧(おの))で三角形状の受けロを作ります。深さは幹の直径の四分の一から三分の一くらいまで入れます。受けロを十分入れてないと、倒れるとき、木が裂けたりヒワレが入ったりするのです。
 受け口ができると、反対の方向からノコを入れます。これを追いロといいます。ノコビキがある程度できるとクサビ(堅い木や鉄でV字形に作った道具)をつっこんで少し起こし、立木の傾き具合でノコビキや受け口を慎重に加減しながら、順次起こしていって、最後は手で押して倒すか、綱を幹に引っかけ、引っ張って倒すのです。なおチェーンソーの場合は速度が速いので、追いロ伐りの終わりころにはとくに注意深く徐々に伐ってゆかねばなりません。伐り倒した木は、枝を払い、木材の用途に応じた長さに伐ります。これをタマギリとかツガイといいました。基本の長さは、スギ・ヒノキの場合、1間(約1.8m)、1丈(約3.0m)、2間(約4.0m)、長材(約6.0m)などで、マツは、1間(約2.0m)、1丈(約3.0m)、2間(約4.2m)、長材(約6.0m以上)などです。」