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えひめ、その住まいとくらし(平成17年度)

(2)町並み保存や地域おこし②

ほかに商人にとってめでたい色である紅殻(べんがら)の朱色の格子や軒先を深くする持送(もちおく)り(写真3-39参照)など多く見られるのも岩松地区の特徴です。
 現在、町並み保存に向けて活動しているのは10人ほどですが、不定期ながら会を開いて話し合いや研究を続けています。津島町やこの地区の古い歴史を少しずつ研究していくと見る目が変わって楽しくなってきました。やはり古いものの価値を見出し、残していこうという共同意識が大切だと思います。内子町などは30年ほど前から行っていますが、ここはまだスタートしたばかりですので、仲間作りや学習を重ねながら、休まず走らず息切れしないように気長にやっていくつもりです。
 『地域のことは自分たちでやる』を合言葉に、今後とも町並み保存活動を生きがいにして努力していきたいと思っています。」

 イ 賑わいを見せた「えひめ町並博2004」

 「えひめ町並博2004」が、「南予観光新時代-交響する人、道、暮らし-」のテーマのもと2004年4月29日(木)~10月31日(日)までの186日間、大洲(おおず)・内子・宇和を中心とする南予一円で開催された(⑪)。キャッチフレーズは「十町十色(とまちといろ)。南予の町の物語。」で、各地域ではこのキャッチフレーズに向けたまちづくりを活発化させて大きな成果を挙げたため、日本イベント産業振興協会主催の「日本イベント大賞」第1回大賞を受賞した。

 (ア)中町での数々の催しやイベント

 西予市宇和町卯之町(うのまち)地区の**さん(昭和21年生まれ)に、「えひめ町並博2004」期間中の卯之町中町(なかんちょう)通りの様子や実施された行事、出店の数々などについて聞いた。
 「えひめ町並博2004は4月29日にれんげ祭り会場で、愛媛県知事はじめ多くの来賓の御参加のもとオープニング式典が開催され、スタートを切りました。多くのお客さんが見えられましたが、特に本格開催された8月12日から10月31日までの80日間のうち、大きいイベントが行われた日には、見たこともないようなお客さんが県内外からおいでになり大変な賑わいでした。
 宇和町卯之町中町通りと歴史文化博物館を主会場にして盛りだくさんの催しがあり、中町通りには全国から骨董(こっとう)・アンティークの店やきもの・古布・小物の専門店などが出店しました。露天にも楽しい店が続々と出店し、江戸情緒あふれる屋台や地元もおむすびの屋台などを出しました。歴史を受け継ぐ酒屋では長期熟成させたお酒を試飲させたり、ワインバーなどもオープンしました。きものや浴衣の着付けサービスなどもあり、優美なきもの姿で散策している若い女性も多く目に付きました。また昔なつかしい金魚売りやかんざしづくり、古布小物づくり、かるたとり、餅(もち)つきなどの楽しい遊びなどもありました。
 9月から10月にかけての週末には、中町広場で週末市が開催され、南予の陶芸作家の作品が勢ぞろいする南予陶芸家市場や西予市の物産を販売する西予市物産祭りなどが開かれました。私は宇和町の創作館で陶芸を行っていますが、その陶芸部でも出店しました。
 イベントでは、歴史文化博物館での『お江戸双六(すごろく)道中』、8月15、16日の両日に300個の行灯(あんどん)が中町を照らし出す『卯のホタル』、開明学校では絣(かすり)のきものにわら草履で100年前の授業を体験する『遊べや学べ 明治の学校』、情緒豊かな『明治の婚礼』、民具館倉庫でのわら細工体験、米博物館での雑巾(ぞうきん)がけレース、富山県婦負(ねい)郡八尾(やつお)町の『風の盆』の踊り手を招いての盆踊り、自衛隊の音楽隊パレードなどさまざまなものがありました。
 期間中の地域の人たちの盛り上がりも大変なものがありました。えひめ町並博の会期終了から1年以上経過しましたが、今でもぼつぼつお客さんは見えられているようです。」

 (イ)ポコペン横丁のタイムスリップ空間

 大洲市肱南(こうなん)地区(大洲市街地のうち、肱川(ひじかわ)の南の地域で城下町として発達した地区)には、明治・大正期の雰囲気を残している特徴的な町並みがあり、この町並みを保全するとともに、新たな魅力を創出するためのまちづくりが進められている。ポコペン横丁は肱南地区にある遊休地を利用し、そこで昭和30年代のレトロな空間を展開して、この地域の活性化を図るために作られた。
 大洲市本町のポコペン横丁で屋台を出している、大洲市常磐(ときわ)町の**さん(昭和43年生まれ)に「えひめ町並博2004」開催時のポコペン横丁の賑わいや屋台の様子、思い出倉庫の展示物などについて聞いた。
 「ポコペン横丁は、6年前に本町一丁目の家具店の跡地を大洲市が買い取り、自営業や商店主、サラリーマンなど気の合う仲間が集まって始めました。昭和30年代ころの懐かしいおもちゃやお菓子類を売っている店、骨董(こっとう)品を扱っている店、竹トンボや竹馬づくりなどが体験できる竹細工店、けん玉やこま回し、紙でっぽう、フラフープなどの遊びができる楽しい店などを並べて、訪れるお客が懐かしく、ほのぼのとした雰囲気になるよう心掛けています。また屋台では、中華そば・コロッケ・カレーライス・やきとり・たこやき・ラムネ・ジュースなどいろいろな飲食物を販売しています。
 奥にある漆喰(しっくい)塗の蔵には、『往時を今に伝える思い出倉庫』があり、昭和35年ころにタイムスリップさせてくれます。昔の駄菓子屋・床屋・くすり屋・ソーダミュージアムなどのほか、卓袱台(ちゃぶだい)(飯台)や古いテレビが置かれた居間、井戸や流しのある台所、狭い便所なども再現しています。そのためここには、近所の子どもや小学生のいる家族などが多数体験学習のために訪れました。
 昨年(平成16年)『えひめ町並博2004』が開催され、大洲市営のまちの駅『あさもや』やこのポコペン横丁もメイン会場になりましたが、ここにも延べ20万人ほどの人々が訪れました。特に7月下旬から10月までの間の土、日曜日には1日に5,000人ものお客さんが押しかけ、向こうが見えないほど賑わいました。県外からは中国地方や九州からの観光客が特に多く、観光バスを連ねてやって来ました。
 ポコペン横丁は町並博が終了した後も、今年(平成17年)11月末までは毎週日曜日、12月から3月末までは第3日曜日に開催します。現在でも多い日には1日に400~500人前後のお客さんが来ています。」
 ここまでたどってきたように、娯楽の少ない時代に、人々が集い心を潤した劇場や映画館、コミュニケーションの場となっていた共同風呂、身体の疲れを癒しリフレッシュさせる石風呂、かつて栄えた鉱山町のくらしや社宅、娯楽場、浴場、さらに、児童や生徒を育んできた学校、地域社会の学びの場など、それぞれにかけがえのない物語が残されていることが確認できた。
 時代に応じて様々な目的や用途に合った利用がなされてきたが、時代の変遷とともに、人々の価値観、考え方などが変化し、今回調査した住まいや建物、学びの場や空間についても閉鎖や廃止、転用、再建、再興が行われて、日々変ぼうを続けている。
 古民家の保存・再生や村並み保存・町並み保存を図って地域おこしにかける人々の姿にふるさと愛媛を愛してやまない、ひたむきな思いを実感することができた。

写真3-39 持送り

写真3-39 持送り

宇和島市津島町岩松。平成17年9月撮影