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えひめ、その食とくらし(平成15年度)

(4)トウモロコシの新たな活用

 最新の科学技術を駆使して地域に古くから伝わる食材から有用成分を取り出し、新たな活用方法を模索しようとする試みが県内でも行われている。
 愛媛大学農学部教授の原田光さんを中心としたグループは、平成11年(1999年)から在来品種の種子を保存する「遺伝子バンク」づくりを進めている。原田さんは10年ほど前から、熱帯林の焼き畑の跡地を森林に戻す研究に取り組んできたが、平成11年愛媛大学の「焼き畑の会」に所属していた学生が集めてきた在来品種のトウモロコシの色や粒のバリエーションに興味を抱き、四国各地の焼き畑で栽培されていた農作物を調査するようになったという。
 4年前から原田さんのグループは、かつて焼き畑を行っていた愛媛・徳島・高知の山村を訪ね、ダイズ、トウモロコシなどの種子を譲り受け、栽培方法やその食べ方、種子がどこから入ってきたかなどを聞き取り調査している。平成15年現在、トウモロコシは約80か所、ダイズは約50か所から収集してきたという。この活動について原田さんは、「トウモロコシはゲノムプロジェクト(細胞の中に存在する遺伝情報の本質を探るための研究計画)が進んでいる主要作物なので、遺伝情報が得やすい材料です。種子を集めることによって、四国に残っている品種には、どのくらいの遺伝的多様性があるのかをはっきりさせ、どれくらいの系統からなっているのか、その系統にはどのような変異が含まれるのか、それが人の移動とどう関係しているのか、また山村の成立とどうかかわっているのかを明らかにしていきたいと考えています。また、いただいた種子を栽培して、将来は希望する方にお分けできたらと思っています。」と語る。
 収集した種子の活用について原田さんは、「実現の見通しがあるわけではありませんが、可能性として、食糧難に悩む海外の荒れ地や高地での利用、病虫獣害に強いといった有用な遺伝子を取り出すことなどが期待できるでしょう。現在でもトウモロコシは、食料や飼料として使うだけではなく、でんぷんから繊維やプラスチックを作り出す方法が研究されています。多様な遺伝子を集めて遺伝資源として保存すれば、より幅広い活用方法が出てくるのではと考えています。」と語る。