データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

遍路のこころ(平成14年度)

(2)世界遺産と遍路文化

 ア 世界遺産について

 世界遺産とは、世界遺産条約にもとづき、世界の様々な文化や自然を代表する遺産として保護して行く価値があると世界遺産委員会が認め、「世界遺産リスト」に登録された文化遺産、自然遺産、その両方を合わせ持つ複合遺産のことをさす。世界遺産には、締結国が世界遺産の対象に該当するもの(建築物、建造物群、遺跡、自然など)を推薦し、世界遺産委員会の審議を経て決定されたものが登録される。世界遺産条約は昭和50年(1975年)に発効し、日本は平成4年(1992年)に締結国として参加している。
 平成13年12月現在、世界遺産に登録されているのは、文化遺産554件、自然遺産144件、文化と自然の複合遺産23の合計721件であり、日本では文化遺産9件、自然遺産2件である。

 イ 遍路文化と世界遺産

 愛媛県の文化財保護課から文化庁への照会によると、世界遺産の登録用件は次のとおりだという。

   ○ 風俗、習慣等の無形のものは対象とならない。
   ○ 寺院の場合は、世界遺産のレベルの価値があり、文化財保護法に基づき、国の「重要文化財」に指定されているこ
    と。
   ○ 道の場合は、文化財保護法に基づき、国の「史跡」に指定され保護されていること。

 こうした中で、遍路文化を考えたとき、次の諸点が指摘できる。

   ○ 遍路の風習のお接待などの無形のものは今のところ対象にはなっていない。
   ○ 四国八十八ヶ所の中で国の重要文化財に指定されているのは13か所であり、愛媛県内では26寺のうち、浄土寺、石
    手寺、太山寺の3か所である。
   ○ 遍路道の場合は、時代による変化が激しく、歴史ある遍路道として特定することの難しさがあり、国の史跡としての
    指定がない。

 したがって現状としては、世界遺産への登録には困難な問題が山積していると思われる。
 愛媛県の加戸守行知事は、平成12年12月の県議会で、世界遺産化への登録は様々な制約があって、現時点としては困難であり、「その実現には、長期的な取り組みが必要であると考えております。」と答弁している(㉝)。
 しかし、世界遺産への登録運動を継続的に行うこと自体は、四国固有の遍路文化を世界にPRする有効な手段として重要なことと考えていると県民交流課では話している。
 また、谷口廣之氏は、阪南大学国際観光特別講座の中で、四国遍路に関する世界遺産化の動きに対して、まだ基盤整備、条件作りが整っていない現状では時期尚早であると述べている(㉞)が、一方では、「熊野古道を含め高野山・吉野大峰の一帯、つまり紀伊半島に点在する宗教施設やそれらをつなぐ道が世界遺産に登録される予定です。」と述べるとともに、「道も一つの文化であるという考えに立てば、道も文化遺産として保護されなければなりません。」と話している(㉟)。