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遍路のこころ(平成14年度)

(1)四国からの遍路文化の発信

 遍路を文化として、四国が一つになって内外に発信しようとする動きが始まったのは、ここ数年のことであろうか。四国の4県都を高速道路で直結するXハイウェイが平成12年3月に開通したが、それらと軌を一にしているようにも思われる。すなわち12年1月にXハイウェイ開通記念のシンポジウムが、Xハイウェイが交差する愛媛県川之江市で開かれたが、それに参加した四国4県の知事から、「四国州」、「四国は一つ」あるいは「八十八ケ所は四国共通の遺産として活用できる。そして世界遺産につなげていける。」といった発言があり(㉚)、同シンポジウムに参加していた東京大学大学院教授の月尾嘉男氏は「八十八ヵ所を世界遺産に推進してほしい。」と述べている(㉛)。遍路文化を内外に発信しようとする組織が出来るのもその前後である。さらに新聞・TVなどのマス・メディアが遍路を盛んに取り上げ始めたのもこのころからである(㉜)。
 こうした動きの中で、民間団体の四国4県の経済同友会が平成11年12月に「四国遍路文化調査委員会」を発足させた。次に四国4県の行政機関が合同で、平成12年9月に「いやしのくに四国交流推進協議会」を設立した。さらに愛媛県の市民団体が、平成12年9月に「『四国へんろ道文化』世界遺産化の会」を設立した。
 これらの3組織の活動目的は、愛媛県県民交流課によるとおおよそ次のようである。

   ○ いやしのくに四国交流推進協議会
     四国各地において培われてきた四国の共通財産である遍路をはじめとする四国のいやしの文化の継承と交流の推進を
    図る。

   ○ 四国四県の経済同友会 四国遍路文化調査委員会
     四国地区の活性化のために「遍路文化」を大きな地域資産として、共同で調査・研究する。

   ○ 「四国へんろ道文化」世界遺産化の会
     「四国へんろ道文化」の普遍的価値を学び、行動し、検証して、それを自分たちの住むまちやむらをより豊かで魅力
    的な地域社会に変革する運動に導くとともに、その現代的意義と価値を世界に情報発信するシンボルとして世界遺産登
    録を目指す。

 県民交流課によると、「それぞれの活動のうち、行政としては、遍路文化に関する学術的な調査研究や遍路講演会の開催あるいはインターネット博覧会への参加、またホームページ上での交流事業の展開や四国4県の経済同友会との意見交換などを開催し、さらには四国遍路文化を紹介する番組の制作・放映支援事業やいやしの国シンポジウムの開催などを行ってきた。今後も民間の活動団体とも情報交換を行い、遍路文化の継承と遍路発祥の地、四国のPRに努めていくことになる。」という。
 経済同友会の「四国遍路文化調査委員会」は平成12年7月に、「四国の『遍路文化』を世界の人々に-『四国遍路文化』情報発信の提言-」をまとめ、各県知事に提言を行った。そこには「四国遍路文化情報発信の提言」として「7項目の提言」がある。その中の「(提言7)四国遍路世界遺産化登録意見書の採択へ」には、概略次のようなことが記されている。「『四国遍路文化』の世界遺産への登録は、世界の人々に『癒しの国・四国』を知ってもらう好機といえる。世界遺産登録申請にあたっては、四国霊場の各札所、遍路道やその周辺の四国の自然、お接待や風土、名もない人々が支えてきたお遍路等、それらを融合した総体を『四国遍路文化』として把握し、検討していく。また、世界遺産登録への提唱を契機に『四国遍路文化』を四国の人々が見直し、次世代に継承して行く大切な文化としての認識が高まることから、四国県民の世界遺産登録への決意を表明する意味で、四国遍路文化の、『世界遺産リスト』への登録を求める意見書を採択し、国レベルへ提出するよう提言する。」
 また、「『四国へんろ道文化』世界遺産化の会」の活動としては、その「会則」に、「本会は、前条(前出の活動目的)の目的を達成するため、次の事業を行う」として4項目をあげている。
 ①学習・研究事業-フィールドワーク(調査・研究)事業、フォーラム・シンポジウムの開催など。②広報事業-「四国へんろ道文化」についてのホームページ開設など。③まちづくり連携事業-「本四国・ミ二四国」の実態調査、関係機関・団体への提言など。④世界遺産化登録事業-署名活動等の展開、遺産化のための学術資料の整理などである。
 それぞれの活動には長い歴史と伝統に培われた四国遍路道文化を改めて見直し、受け継ぎ、全国及び世界に発信しようという思いと、地域をはじめ、四国全体の活性化にも寄与しようとする思いがある。