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遍路のこころ(平成14年度)

(1)若者の遍路意識

 ここでは愛媛県内の高校生への簡単なアンケート調査をした結果をもとに若者の遍路意識について記してみたい。調査対象は、愛媛県の東予、中予、南予の各4校、計12校を抽出し、各校の3年生1学級の生徒とした。各校40人前後で、12校で470人の回答を得た。また「新四国」ながら、「島四国ウォーク」を実施している大島高校にも同じアンケートを依頼し、1~3年生の49人の回答を得た。
 アンケート項目は、次の(ア)から(力)であり、その結果を図表4-13から図表4-18に示した。

 ア アンケート結果とその分析

 (ア)あなたは四国遍路についてどの程度知っていますか(図表4-13)。

 「四国遍路」については12校全体の470人では、「よく知っている」と「大体知っている」を合わせても、知っているとの答えは18%である。一方大島高校では「島四国ウォーク」の実体験との関係であろうか、49%が「知っている」、「大体知っている」と答えている。残念ながら、「四国遍路」そのものが一般の高校生にはあまり知られておらず、大島高校生との較差は大きい。

 (イ)あなたは四国八十八ヶ所についてどの程度知っていますか(図表4-14)。

 「四国八十八ヶ所」についても、一般の高校生にはあまり知られていない。「よく知っている」が3%、「大体知っている」の17%を合わせても20%である。大島高校生41%の半分の認識度である。
 もっとも「全く知らない」という一般の高校生は、「四国遍路」の33%に比べて「四国八十八ヶ所」については20%であり、こちらの方がよく知られている。また逆に言えば、80%の生徒が少なくとも「四国八十八ヶ所」という語句は知っているともいえる。
 また、「これらの知識は何から得ましたか」の答えは、図表としては示していないが次のようであった。「四国遍路」、「四国八十八ヶ所」それぞれに、一般の高校生はマス・メディアから得た者が25%と33%、学校から得た者は3%と6%、身近な人からが40%と62%である。大島高校生は、それぞれに対応するものが、20%と18%、53%と47%、39%と39%である。共に身近な人から得た割合が大きいが、テレビ・ラジオから得た者も、共に約20~30%ずついる。大きな差が見られるのは学校からの情報である。

 (ウ)遍路にかかわる「お接待」についてどの程度知っていますか(図表4-15)。

 「お接待」については、遍路にかかわったことのない一般の高校生は、ほとんど知らないといえる。「よく知っている」、「大体知っている」と答えた者は合わせてもわずかに6%である。「全く知らない」者が82%、「あまり知らない」の12%を合わせると94%にもなる。大島高校生では知っていると肯定的に答えた者は44%である。

 (エ)自分の願いを込めて四国の八十八ヶ所のお寺を巡り歩くことによってその願いがかなうと言われることについてあなた
   はどう思いますか(図表4-16)。

 遍路の願いがかなうと言われることについて、一般の高校生の3%の者が全くそうだと信じ、「ありうる」の25%を加えると約30%の生徒が、また大島高校生も約40%の者が肯定的にとらえている。「全くありえない」については13%と6%と開きがある。わずか1日のこととはいえ、「島四国」の行事で自らその中に身をおき、遍路と触れ合ったことが影響しているのであろうか。

 (オ)八十八ヶ所のお寺(札所)をまわる四国遍路は、心を癒(いや)してくれる場だと言われていますが、このことについて
   あなたはどう思いますか(図表4-17)。

 この回答で、肯定的なのはむしろ一般の高校生の方である。「全くその通り」「ありうる」の回答を合わせると50%で、大島高校生の場合は40%である。「癒し」を求める思いは若者にも多いのであろうか。そして、その思いには信仰心とはかかわりなく、四国遍路に託す願望のようなものがあるのであろうか。

 (カ)あなたは将来、四国遍路に出掛けてみたいですか(図表4-18)。

 四国遍路に出掛けることについては、一般の高校生・大島高校生共に似たような結果である。ぜひ行きたいは、共に10%未満である。遍路が癒しになると肯定しても、行動に移すには抵抗があるということであろうか。ただし、「きっかけがあれば」出掛けたいとする生徒がそれぞれ30%近くいることは、3分の1の高校生は関心があるともいえ注目してよいと思われる。

 イ 愛媛県の高校生の遍路意識

 アンケート結果から愛媛県の高校生の遍路について、意識の特徴をまとめると次のようになる。

   ○ 遍路ブームといわれながら、「四国遍路」・「四国八十八ヶ所」共に、高校生で大体知っているという者は、20%
    ほどである。四国独白の文化といわれながら、高校生にはまだまだ知られていない。
   ○ 「お接待」が、人と人の触れ合う遍路の心として、最近改めて広がりつつあるが、かかわったことのない高校生の認
    知度はきわめて低い。
   ○ 四国遍路に関する知識は身近な人から入ることも多い。異世代とのかかわり合いが生徒の知識を広げている。特に、
    長い伝統と歴史のある文化や経験と結びつく文化は、年配者から若者へ日常の生活の中で伝わっていくものではないだ
    ろうか。
   ○ 四国遍路と癒しの関係については、あるとする者50%、無いとするもの20%である。若い高校生といえども、信仰
    心とは別に四国遍路に癒しを求める期待があるのであろうか。
   ○ 四国遍路にぜひ出てみたいという者は5%である。癒しの効果はあるとしても現実に遍路することには歩く苦しみを
    想定しているのであろうか、「歩くのはしんどいから」、「癒しは別の方法でも可能だから」との感想がある。とはい
    え、きっかけがあれば行きたいとする者も32%いることは注目してよいと思われる。

図表4-13 四国遍路

図表4-13 四国遍路


図表4-14 四国八十八ヶ所

図表4-14 四国八十八ヶ所


図表4-15 お接待

図表4-15 お接待


図表4-16 遍路の願い成就

図表4-16 遍路の願い成就


図表4-17 遍路と癒し

図表4-17 遍路と癒し


図表4-18 遍路体験

図表4-18 遍路体験