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えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業11-鬼北町-(平成28年度「ふるさと愛媛学」普及推進事業)

第1節 旧日吉村の産業と人々のくらし

 日吉村は高知県四万十(しまんと)市に注ぐ四万十川の支流広見川の源流地帯にあり、昭和35年(1960年)現在の産業別就業人口構成は、第一次産業60.1%、第二次産業7.4%、第三次産業32.4%であった。特に第一次産業では、農業人口が60.6%であるのに対して林業人口が39.4%であり、林業就業者の比率が高いことが特徴である。昭和40年(1965年)の統計によると、旧日吉村の総土地面積(8,891ha)に占める林野面積(8,127ha)の割合は、91.4%であり、戦後から昭和40年代ころまでは豊かな山林の資源を生かし、現金収入を目的としたシイタケ栽培や炭焼きなどが盛んに行われてきた。
 一方、広見川流域の谷底平野には小集落が点在した。昭和40年の同統計によると、日吉村における田畑は312haであり、総土地面積に占める耕地率は、わずか3.5%にすぎなかった。人々は限られた田畑で牛耕による稲作を行ったり、養蚕のために桑畑を開いたりするなど、当時の時代背景に応じた農業を展開して懸命に生きてきた。
 本節では、旧日吉村の養蚕業の発展と養蚕指導員としての仕事についてAさん(昭和11年生まれ)に、肥育牛の飼育と農家でのくらしについてBさん(昭和3年生まれ)に、父野川(ちちのかわ)地区での製炭と山間部でのくらしについてCさん(昭和14年生まれ)に、シイタケ栽培と日向谷(ひゅうがい)でのくらしについてDさん(昭和7年生まれ)にそれぞれ話を聞いた。